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モバイル赤字縮小、好調な金融と堅実なEC/楽天G 2024Q2決算速報

 楽天グループの2024年第2四半期決算の話題です。マスメディアを筆頭に、モバイルに関して言及されがちですが、足元ではモバイルの赤字が縮小しているのが好材料です。ここまできてようやく、他とは少し違う角度で、モバイルの価値を活かそうとしていることが見えてきました。ハイライトを説明すると、売上収益は5,372億円で、前年同期比で8.1%増加。営業利益は-118億円でも、連結EBITDAは668億円の黒字を達成。モバイルが改善していることを強調しています。

・気になるモバイルの業績に与える影響

 それは、まず楽天モバイルの全契約回線数は770万回線を達成したことがあります。かつ、顧客獲得などのマーケティングコストを除いたPMCF(マーケティング前キャッシュフロー)という指標がありますが、ここでは黒字化を達成したことを明らかにしています。

 PMCFというのをもう少し見てみると、利益が上り調子なのがわかります。

 かなりの投資が必要な大掛かりなプロジェクトで悲観する声もありました。でも、楽天経済圏への寄与で考えると、グループ内でもキャッシュフローがプラスに転じているます。 ただ、今はまだ顧客獲得に向けた投資フェーズなので、契約獲得をしながら、早い段階でのEBITDA黒字化を目指すとしています。

楽天市場は外的要因もありつつ堅調

 セグメント別で見てみると、インターネットサービスセグメントの第2四半期の売上収益は3,039億円(前年同期比3.1%増)。彼が強調したのは、Non-GAAP営業利益が+30.3%であること。つまり、SPUの改善などを行い、優良なお客様に厚くフォローする施策を行ったことで、ECなどの売上収益の成長性の鈍化に対して、会社として利益を確実に確保できる体制を整えたということです。

 国内EC流通総額は-4.8%ではあるものの、昨年同期と同一条件で比較した場合で言えば、昨年同期比+3.1%。また国内EC Non-GAAP営業利益は、同じく同一条件であれば、前年同期比+25%だとして、成長を続けていると明らかにしています。

現状分析とこれからの見通し

 つまり、ECは全国旅行支援などの状況を取り除けば、前年同期比+3.1%。これを支えているのが先ほどから言われている通り、優良な顧客での購買であるから、会社における安定的収益を作れるようになっているとのこと

 同一条件というのは2023年12月のSPUポイント変更、0/5コスト移管、2023年7月までの全国旅行支援などを指しています。

 第3四半期決算で言えば、ふるさと納税のルール変更などで、駆け込み需要があったため、前年比とのハードルが高い。ただ、最終的には、第4四半期以降のプラス成長で、通期でみれば、プラス成長は可能。そこを目指していくと言います。

金融はグループのアセットを活かして好調

 この会社にとってフィンテックセグメントは極めて重要。第2四半期の売上収益は2,027億円(前年同期比11.9%増)。Non-GAAP営業利益は、423億円(前年同期比28.1%増)。

大きいのは更に楽天カードの取扱高が拡大していることで、これを支えるのが「楽天市場」などのEC。ショッピング取扱高が5.9兆円(前年同期比+13.9%)。だからこそ、優良顧客で循環させていくことに意味が出てきます。

 それに加えて、楽天銀行の口座数も、1333万(前年同期比+22.7%)となったほか、楽天証券を含めて、顧客基盤が安定して伸びています。
流通を生み出し、売り上げを伸ばすとともに、会員基盤を盤石にすることで、営業利益を向上させます。会社が力を入れていくジャンルをお客様にも並走してもらって、優良顧客となれば、コストが収まり、会社全体の業績の寄与度が高まり、お客様への還元も大きくなる。

モバイルは収益が改善 未来にも道筋

 モバイルセグメントは、売上収益が950億円(前年同期比18.6%増)と堅調に成長しており、Non-GAAP営業損失は-606億円。ただ、これは前年同期比から218億円改善されたものであり、EBITDAにおいては、その改善額は253億円(-187億円)となった。

 

 ここにおける主要KPIは回線数、MNO契約率(770万)、MNO(1.04%)、ARPU(2031円)であり、いずれも堅調。少し詳しく言及すると、まるっきり新しいユーザーというよりは、経済圏を利用して信頼してくれているユーザーを軸にして、新規獲得を触発することで、純増。
 特に増え方でもプラス材料なのはMNPによる純増数が高いこと。つまり、メイン回線を楽天モバイルにしている人の数が増えているから、今後、ヘビーユーザーになる可能性が高い。これこそが彼らの意図するところ。
それに加えて、若年層の利用が増加し、ネットを使うヘビーユーザーとなる要素がこれも高い。
モバイルのヘビーユーザーの動向がEC売上とカード利用機会、データ精度向上に繋がっていく。

モバイルのヘビーユーザーの動向がEC売上とカード利用機会、データ精度向上に

 つまり、ヘビーユーザーの数が増えるほど、彼らが目指しているARPUを上げることになるから、支払う価格の上限となるほど、ポイントが支給され、経済圏での回遊が増加するというわけです。

 現に、楽天市場の流通総額において、直近一年での一人当たりの平均流通総額でみれば、非契約者に対して契約者は+49.7%という高い数字が見られます。

 また、決算発表ながら、楽天の姿勢を見せるべく、資料の中にAIに関する事項を多めに入れていたのが印象的。要するに、たとえば、購買においては、下記のような漠然とした要望に対して応えるものです。

  • ・東京の夏の花火大会に着ていく服(セマンティック検索)
  • ・電子レンジと一緒によく買うもの(レコメンド)

 従来とは全くイメージが異なるモールでのショッピング体験。セマンティック検索と言われる「本当に欲しい商品の発見」につながる要素。それらは、まず、楽天ファッションで用いられ、検索結果ゼロが93.5%減少。2024Q1から、楽天市場でも導入され、同じく検索結果ゼロが98.5%減少したといいます。

 そして、ユーザーのプロファイルに基づき、関連性の高い広告表示がなされます。ある意味、これが楽天にとっては更に広告収入を増やす材料となり、お客様には利便性の向上となります。企業価値を底上げしながら、収益に繋げる新たな彼らの姿勢を垣間見れます。

・経済圏のデータとAIの精度こそが楽天の価値に

 こういう形での全体の購入シーンにおける体験の質の向上。そこに努めることで出店店舗と利用者のプラスの側面をもたらすわけえです。

 かつ、その上で、ビジュアル検索の精度も高くなっているとか。それは上記の写真を見ていただくとわかると思います。

 以上のようにして、肝となるのは、楽天市場をはじめとして実際の購入にまつわる様々なデータ。そこが起点となって、この企業の付加価値を向上させていくことを明らかにし、それは、モバイルの利用機会増加などによってさらに精度が高まっていく。

 その後、報道関係の質問の中で、「競合他社も楽天モバイルの料金に対抗する姿勢を見せている」ことへの言及がありました。
 ただ、そこへの三木谷さんの答えでも、楽天モバイルの環境が他とは違う道を歩いていることを強調しました。
 つまり、他社がいかなる対策をしようとも、それほど大きな影響を見せることはない。それはここまで書いてきたように、ECや金融をフックにして生産性を高めているし、インフラもソフトウェア開発で行なっているから、他社に左右されることなく、我が道を突き進めるからなんですよね。
 何より、そのような趣旨を三木谷さんの表情が、以前よりも落ち着いたものであることが、この会社の未来に対しての全てを言い表しているのではないかと思った次第です。

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