楽天市場は「探す場」から「相談する場」へ──AIコンシェルジュが変えるECの入口
楽天が、ECの入口を大きく書き換えた。エージェント型AIツール「Rakuten AI」を、「楽天市場」のスマートフォンアプリに正式搭載したのである。これにより、楽天市場には「AIコンシェルジュ」が常駐することになった。ユーザーは商品名や条件を自ら組み立てて検索するのではなく、対話を通じてニーズを整理し、最適な商品提案を受けることができる。
これは単なる検索機能の進化ではない。楽天が長年築いてきた巨大な商品群とデータを前提に、ECを“探す体験”から“相談する体験”へと再定義する試みである。
楽天市場に現れた「AIコンシェルジュ」
今回のアップデートで、「楽天市場」アプリのホーム画面右下に「Rakuten AI」への導線が設けられた。ユーザーはテキスト、音声、画像を使って、予算、目的、利用シーンなどを入力できる。特徴的なのは、AIが一方的に答えを返すのではなく、質問を投げかけながら対話を進める点である。
このプロセスによって、ユーザー自身も気づいていなかった潜在的なニーズが言語化され、商品提案の精度が高まる。
楽天市場に並ぶ約5億点の商品群を前に、「何を選べばいいかわからない」という状態そのものを、AIが引き受ける構造だ。
「検索」ではなく「理解」から始まる商品選び
従来のECは、検索条件をいかに正確に入力できるかが前提だった。価格帯、サイズ、用途、ブランド──それらを事前に定義できる人ほど、有利な設計である。AIコンシェルジュは、この前提を崩す。
曖昧な要望や、まだ固まっていない意図を受け止め、対話を通じて「何を探しているのか」を一緒に組み立てていく。
これは、楽天市場が「条件指定型のデータベース」から、「意図理解型のショッピング空間」へと変わり始めたことを意味する。
商品情報に“文脈”を重ねるという発想
AIコンシェルジュが提示する情報は、商品データや価格比較だけにとどまらない。気候、流行、社会情勢といった外部トレンドも自然検索結果から反映される。
つまり、
「今、この状況で、その人が選ぶなら何が妥当か」
という文脈込みの提案が行われる。
今後は、楽天が保有するEコマース由来のマーケティングデータも活用し、購買傾向や嗜好を踏まえた、より個別最適な提案が行われる予定だ。楽天市場は、商品を並べる場から、判断材料を統合する場へと役割を広げている。
「Rakuten AI」はエコシステムの入口になる
今回の楽天市場アプリへの搭載は、「Rakuten AI」構想全体の中でも重要な位置づけにある。AIエージェントを通じてユーザーを理解し、楽天エコシステム内のさまざまなサービスへ自然につなげていく。
楽天が掲げる「AI-nization」は、AIを裏側の効率化ツールとして使う話ではない。
ユーザーとの接点そのものをAIに担わせるという思想である。
その意味で、楽天市場への搭載は、エージェント型エコシステムが“構想”から“実装”に移った瞬間と言える。
ECは「選ばせる場」から「伴走する場」へ
楽天市場のAIコンシェルジュは、ECにおける役割の変化を象徴している。
商品数を増やし、検索精度を高める競争から、ユーザーの意思決定にどこまで寄り添えるかという競争へ。
楽天は、AIを前面に出すことで、「選ばせるEC」ではなく「一緒に考えるEC」を目指している。
この変化は、楽天市場に限らない。
今後のEC全体にとっての、一つの基準線になる可能性を秘めている。