楽天がファッションウィーク東京の冠スポンサーに就任――なぜ今、楽天がファッションを強化するのか?
(145MGAZINE創刊前に、楽天から誘いを受けて参加し、書き上げた記事)
ZOZOがヤフーの子会社となってから日が浅い中、新たな動きが注目を集めている。楽天の三木谷浩史会長兼社長が「ファッションウィーク東京」の記者会見に姿を見せ、冠スポンサーとして参画することを発表したのだ。通販サービスとしてのイメージが強い楽天だが、なぜここにきてファッションの領域に本腰を入れるのだろうか。
世界各都市で開催される「ファッションウィーク」とは
年に2回、パリ・ミラノ・ロンドン・ニューヨークなど世界の主要都市で開催されるファッションウィークは、最新コレクションを発信する一大イベントだ。
これまで楽天はファッションに強い印象が薄いと思われてきたが、実は自社通販内で「楽天ブランドアベニュー」(現在の「Rakuten Fashion」)という大規模なファッション専用モールを運営している。その参加ブランド数はすでに1,000を超え、流通総額も約6,000億円規模。ZOZOをしのぐ取り扱い高を誇るともいわれ、こうした実績からも楽天がファッションを重要視する理由がうかがえる。
楽天が目指す“ファッションのプラットフォーマー”像
三木谷氏が見据えるのは、いわゆる「プラットフォーム」としてのさらなる進化だ。これまで楽天は日本各地の店舗にECの販路を提供し、“ネット上の商店街”を創り上げてきた。
そのノウハウをファッション領域に活かし、ブランドやデザイナーを中心とした新しい仕組みを築き上げようとしている。
具体的には、「ファッションウィーク東京」と連携することでイベントを盛り上げるだけでなく、新たにリブランディングした「Rakuten Fashion」を軸に、オンラインとオフラインの双方向の相乗効果を生み出す構想がある。
例えば楽天ペイや楽天ポイントを使えば、リアル店舗への集客も図れるなど、ネット企業の枠を越えた取り組みが期待されているのだ。
ファッション業界が抱く楽天への期待
この動きにはファッション業界の大物も注目している。ビームス社長の設楽洋氏は、レセプションパーティーで「日本のファッションシーンは昔に比べて盛り上がってきたが、海外へ打って出る若い才能がやや少なくなった」と指摘。
そのうえで「ファッションウィーク東京と楽天のタッグによって、新しいデザイナーがどんどん世界に飛び立ってほしい」と期待を寄せた。
ブランド側も、楽天が提供するプラットフォームを活用すればEC面だけでなく、プロモーションや販路拡大など多角的なメリットが得られるだろう。楽天にとっても、ファッションという華やかな舞台を通じて経済圏をさらに拡大するチャンスとなる。
「Shopping is Entertainment!」をファッションでも
パーティーではアーティストMIYAVIがライブパフォーマンスを行うなど、エンタメ要素を盛り込んだ演出が注目を浴びた。楽天の合言葉である「Shopping is Entertainment!」は、地方の店舗にとって新たな可能性を広げてきた実績がある。それをファッション領域でも発揮しようというわけだ。
ファッションに敏感な層は、こだわりや感度が高いゆえに容易には動かない。だからこそ、新しい体験やデザイン性を打ち出すことが欠かせない。ファッション業界自体も変化の時を迎えている今、楽天がどのようにクリエイターやブランドの力を結集し、新時代のファッションを切り開いていくのかが注目される。
未来への展望
日本発の先進的なデザイナーが世界へ進出するための後押しとして、楽天のような総合プラットフォーム企業との協業は大きな可能性を秘めている。ネット企業としての枠を超えた楽天が、イベントやコミュニティを通じてファッション業界に新しい風を吹き込み、“日本らしい魅力”を世界へ発信できるか――その行方は今後のファッションウィーク東京をはじめとするイベントの盛り上がりとともに注目されていくだろう。
ファッションを“コマース”としてだけではなく、カルチャーやアートとしての価値も含めてどこまで盛り上げられるのか。楽天が発信する新たなファッションの世界観に、多くの業界関係者やファッショニスタたちが期待を寄せている。日本のファッションシーンがより刺激的な未来へ向かう、その大きな一歩がまさに今、始まろうとしている。