オープンロジ×住友商事×SGL 業務提携に見るEC物流の新潮流
ネット通販市場の拡大が止まりません。オンラインでショップを立ち上げるハードルは年々下がり、誰でも気軽にECビジネスを始められるようになりました。一方で、店舗運営において大きな課題となるのが「物流」です。ここでは、物流を自動化・効率化し、店舗側のブランディングやマーケティングにリソースを集中させることが重要になります。
そうした中、住友商事株式会社と住商グローバル・ロジスティクス株式会社(SGL)が、株式会社オープンロジとの業務提携を発表しました。これによりEC物流の世界はどう変わっていくのか。その背景と注目のポイントを整理してみましょう。
1. EC拡大の中で求められる物流自動化
EC業界の成長はめざましく、顧客ニーズも多様化してきています。
- • ブランディングに注力したい店舗にとって、物流オペレーションに人手やコストを割くのは大きな負担。
- • 一方、物流業界自体も取り扱う荷量が膨大になり、すべてを個別対応するのは限界がある。
そこで注目されるのが、倉庫・配送といった物流を自動化・標準化し、効率化する仕組みです。これにより、店舗はよりクリエイティブな部分にフォーカスでき、事業をスピーディに立ち上げやすくなります。
2. オープンロジが生み出す「平準化」の魅力
オープンロジはEC事業者向けに、複数の倉庫や配送会社とのネットワークを一括で利用できる物流プラットフォームを提供しています。その特徴は、大きく次の2点に集約されます。
1. 荷主の作業フォーマットを標準化
従来、物流といえば「荷主企業ごとにカスタマイズする」ことが一般的でした。しかしオープンロジは、あえて標準化したフォーマットを導入することで、複数の荷主と多数の倉庫・配送会社を効率よく紐づけています。
2. すぐに利用できる&従量課金制
新規EC事業者は、初期コストを抑えつつ「とにかく早く販売を始めたい」というニーズが強いです。オープンロジのシステムなら、初期費用をかけず、必要なときに必要なだけ利用でき、スモールスタートに最適です。
こうしたモデルは、急拡大を狙うスタートアップやリソースの限られた企業に支持されてきました。店舗側はブランディングや商品開発に力を入れやすく、物流の手間とコストを最小限に抑えられるからです。
3. 「物流を安くする」だけが目的ではない
一部の店舗や事業者には、「とにかく物流費を安く抑えれば良い」という考え方も見られます。しかし大切なのは、事業フェーズに合った仕組みを作り、ブランド価値を高めることです。
- • ブランドイメージを高めるには、配送のスピードや梱包品質も重要。
- • とはいえ、すべてを自前で完璧に整えようとすると膨大なコストや時間がかかる。
そこで、EC事業を立ち上げたばかりの段階や、リソースが限られている場合は、オープンロジのような標準化・自動化されたシステムを活用して、まずは事業成長に集中するのが得策といえます。
4. 住友商事×SGL×オープンロジが目指す新たな物流の形
4.1 住友商事の強み:消費地近接型物流施設「SOSiLA(ソシラ)」
住友商事は、都市圏を中心に高い配送利便性を備えた消費地近接型物流施設「SOSiLA(ソシラ)」を展開してきました。顧客に速やかに商品を届けたいEC事業者にとって、倉庫の立地や設備の良さは大きな魅力となります。
4.2 住商グローバル・ロジスティクス(SGL)の強み:カスタムメイド型の物流機能
SGLは大規模ネット通販事業者向けに、個別のニーズに応えるカスタムメイド型の物流を提供してきました。業界のメインプレーヤーとして培ったノウハウやネットワークを有しており、大規模案件や高度な要望にも対応可能です。
4.3 それぞれのノウハウを融合し、EC事業を支える
今回の業務提携では、オープンロジの標準化・自動化ノウハウと、住友商事・SGLの施設インフラやカスタム対応力をかけ合わせることで、次のようなメリットが期待できます。
1. EC事業の成長フェーズに応じた柔軟な物流対応
- • 小規模でスタート → オープンロジの標準化システムでスピード重視
- • 事業規模拡大 → SGLのカスタムメイド型にシームレスに移行
2. コストとサービス品質の最適化
- • 一括管理による効率化とコスト削減
- • 消費地近接型施設の活用で配送リードタイム短縮や顧客満足度向上
3. 新規顧客の開拓とビジネスポートフォリオの拡大
- • 「オープンロジをきっかけ」にECを始める事業者も取り込みやすい
- • 大規模案件にも対応できる体制を確立
5. まとめ:EC物流の新たなスタンダードへ
EC業界が今後も拡大していくのは確実です。その中で店舗がやるべきことは、ブランドイメージや商品の差別化に注力すること。一方で、倉庫や配送といった物流面は、自動化や平準化でいかに効率を高めるかが大きなテーマになってきます。
今回のオープンロジ×住友商事×SGLの業務提携は、EC事業者にとって、成長フェーズに合わせた柔軟な物流サービスを利用しやすくなる大きな転換点といえるでしょう。小規模から大規模まで、それぞれが必要とする物流機能を適切に選べるエコシステムができれば、ネット通販の可能性はさらに広がるはずです。今後の展開から目が離せません。