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担当者が業界を動かす日。──第3回ネットショップ担当者アワードに見る、“人”が主役のEC

ネットショップ担当者フォーラムが主催でありながら、これまで「担当者」にフォーカスしたアワードは存在しなかった。「けれど、現場を動かしているのは、いつも“人”なんです。」だからこそ、このアワードがある。

 照明の下で呼ばれるのは、企業名ではなく、人。壇上に立つのは、日々現場を動かしてきた“担当者”たちだった。第3回を迎えた「ネットショップ担当者アワード」。

 その理念の中心にあるのが、“ロールモデル”という考え方だ。目標とする人をつくり出し、業界全体の未来を照らしていくことが狙いである。

■ ロールモデルとしての実践者たち──現場の物語

 この日、5人のロールモデルが壇上に立った。この場で感じられたのは、テクノロジーの話ではなく、“人の意志が業界を動かしている”という実感だった。

【MVP(最優秀賞)】グレイ・パーカー・サービス 小林辰也さん

「ちいかわ」「コウペンちゃん」など、人気キャラクターのグッズを手がける同社。小林さんは、12の公式ECサイトを束ね、前年比150%超の成長を牽引した。

 印象的だったのは、彼が語った一言。

「キャラクターの魅力をどう守るか。それが僕たちの仕事です。」

“売る”のではなく、“文化をつなぐ”。その言葉に、ECの新しい価値観が凝縮されている。キャラクターとファンのあいだに立ち、世界観を崩さずに熱量を保つ──。

小林さんの挑戦は、“人の想いを媒介するEC”という次の時代を映していた。

【ブレイクスルー賞】リンベル株式会社 大川和弘さん

ギフト市場の老舗として知られるリンベル。老舗ゆえに、新たな挑戦には勇気が伴う。そんな中で、EC売上をわずか数年で2.4倍に引き上げた。デジタル化を推進する中でも、「お客様を見続けることが一番の基本」と語る。

新たな技術を導入しながらも、常に中心にあるのは“贈る人の想い”だった。大川さんの発言には、企業の枠を超えたECの原点がある。

「ギフトという文化を次の世代へ」。デジタルを使って“人の温度”を残す試みは、まさにブレイクスルーの名にふさわしい。

【コミュニティ共創賞】VALX株式会社 古賀雅範さん

プロテインブランド「VALX」は、広告費ゼロで1,500件以上のUGC(ユーザー生成コンテンツ)を生み出す稀有な存在だ。その背景にあるのが、古賀さんの“熱量の設計”だ。

彼は言う。

「お客様との熱量を、数字として見えるようにしたかった。」

 SNS運用から動画制作までをすべて内製化。チーム全員が同じ熱を共有する仕組みをつくり、定性的な感情を定量的に可視化した。

「掛け算になれていなかった熱量を、形にしたかった」という言葉に、ECの未来がにじむ。

 VALXの取り組みは、“人の得意”を生かしたデジタルの使い方を示している。ブランドと顧客が互いに育て合う。まさに“共創”の名を冠するにふさわしい実践だ。

【越境ビジネス賞】株式会社ビィ・フォワード 土屋汐莉さん

214の国と地域に中古車を販売する越境EC。土屋さんは、ローカルペイメントやSNSの現地運用を推進し、“日本品質をどう安心に変えるか”という課題に挑み続けている。

「日本ではワンクリックで買えるものも、海外では不安が先に立つ。

その壁をどう取り除くかが、私たちの役割です。」

 それはもはや販売業ではなく、サービス業の領域。“越境”とは距離を超えることではなく、文化や心理の壁を超えること。土屋さんの取り組みが、それを教えてくれる。

【SNSマーケティング賞】ビルディ株式会社 戸田夏海さん

建設資材や工具を扱うBtoB EC「ビルディ」。SNSと現場をつなぎ、業界の地味な印象を変えようとしている。現場の人たちに「これ便利だね」と言ってもらえる瞬間──それを追い続けている。

建設業界にデジタルを持ち込み、課題を一つずつ解決していく。その地道な姿勢は、“華やかさとは無縁の改革者”という言葉が似合う。

戸田さんの活動は、BtoBにおける「人の信頼で動くEC」の形を示していた。

■ “理念が形になる瞬間”──会場に流れた共感の空気

この日のアワードでは、拍手の音が少し違って聞こえた。とかく、売上や企業名に光が当たりがちな中で、数字でも規模でもなく、“人の努力”に対する称賛の音だったからだ。

閉会の挨拶で、編集長の瀧川さんが強調していたのは、「賞はゴールではなく、出発点。」ということ。壇上に立った人も、客席で拍手を送った人も、皆がどこかで“明日を動かす担当者”なのだ。

 EC業界の進化は、ツールや仕組みではなく、人がどれだけ本気で考え、行動するかにかかっている。それを証明するように、この日のアワードは“業界を支える人たち”の物語として、確かに刻まれた。

「担当者が業界を動かす日」──その言葉は、もう未来の話ではない。

 今日はこの辺で。

 

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