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減収の裏で何が起きていたのか──LINEヤフー決算に見る「コマース再成長」の実像

 2026年2月4日、LINEヤフー株式会社は2025年度第3四半期の決算を発表した。表面的な数字だけを見れば、売上収益は前年同期比でわずかに減収。調整後EBITDAもマイナス成長となっている。確かに「アスクルのシステム障害」の影響は見られる。ただ、その一過性要因を取り除いたときに現れる、コマースを軸とした明確な成長軌道だ。ただ、それは、越境ECを軸としたもので、国内に関しての言及は少なかったように思う。

アスクル影響の裏側で進んでいた「実質2桁成長」という事実

 第3四半期決算を語るうえで、避けて通れないのがアスクルのシステム障害による影響だ。全社売上収益は前年同期比で▲0.7%、調整後EBITDAも▲2.3%と、数字だけを見れば足踏みしているように映る。しかし、説明会で繰り返し強調されたのは「アスクルを除いたベース」での業績だった。

 この前提に立つと、売上収益はYoY+15.7%、調整後EBITDAも+11.2%と、明確な2桁成長を示している 。実際、決算資料でも「事業の実態は堅調に推移している」と明言されており、全社としての収益構造が崩れていないことが示されている 。ここで注目すべきは、コスト削減だけで利益を維持しているわけではない点である。

 戦略セグメントの増収や、コマース領域の拡大が、販管費の増加を吸収する形で機能している。つまりLINEヤフーは、「守りの決算」ではなく、成長を内包した耐性のある構造へと移行しつつあるのだ。

eコマース取扱高が示す、ショッピングとリユースのコントラスト

 コマース領域を読み解く上で、最も象徴的なのが「eコマース取扱高」の推移である。全社のeコマース取扱高はYoY+2.5%と、緩やかながらもプラス成長を維持した 。この内訳を見ると、明確なコントラストが浮かび上がる。

 一つは国内リユース領域。Yahoo!フリマの成長に加え、BEENOSの連結化が寄与し、2桁成長を記録した。リユース市場における存在感が、量・質ともに高まっていることがわかる。

 一方で、ショッピング領域はYoY+2.0%と、やや控えめな成長にとどまった。背景には、前年に発生したふるさと納税の反動減がある。考え方によれば、構造的な失速ではなく、制度要因による一時的な揺り戻しだという捉え方もできる。

 また、重要なのは、リユースとショッピングを合わせた全体像として、LINEヤフーのコマースが「多層的な取扱高構造」を持ち始めていることだ。新品販売、リユース、BtoB、海外EC。それぞれが異なる成長曲線を描きながら、全体として安定性を高めている。これは単一モデルに依存しない、分散型コマース基盤への進化といえる。

コマース事業は「減収減益」では終わらない

 決算資料の表面だけを見れば、コマース事業は減収減益と整理されている。アスクルを除いたベースでは、コマース事業の売上収益はYoY+31.0%、調整後EBITDAは+15.5%と、高成長セグメントとしての姿を明確に示している 。

 成長を牽引したのは、LINEヤフーコマースとBEENOSの連結効果だ。特にLINEギフトや越境ECを含む領域では、グループ内シナジーが実体を伴って表れ始めているようだ。販促費が増加しているにもかかわらず、利益が確保されており、投資フェーズと回収フェーズが重なり始めていることを示唆している。

 国内でのYahoo!ショッピングなどの国内ECへの過剰な投資ではなく、競合モールが越境が手薄なところを踏まえて、BEENOSの子会社化により、相対的にコマース領域を伸ばす動きをとったことは奏功している。

 単なるコスト管理ではなく、「売れる構造を作りながら利益を出す」段階に入った。この点で、コマース事業は明確に次のステージに進んでいる。

広告とコマースが分離しなくなった決算

 今回の決算で興味深いのは、広告とコマースの関係性だ。全社の広告関連売上はYoY+2.8%と緩やかな成長にとどまったが、その中でコマース広告は+20.1%と、明確な伸びを示している 。

 これは、広告が「露出のための広告」から、「取扱高に直結する広告」へと役割を変えつつあることを意味する。コマースの取扱高が伸びることで広告も伸び、広告が機能することでさらに取扱高が伸びる。

 この循環が、数字として可視化され始めたのが今回の決算だ。従来、広告とコマースは別セグメントとして語られることが多かった。しかしLINEヤフーにおいては、その境界が急速に溶けつつある。広告はコマースの“前段”ではなく、コマースの一部になり始めている。

コマースの先にある「ARPA拡張」という設計思想

 決算説明会の後半で語られたのが、OA(LINE公式アカウント)を起点としたミニアプリ、そしてSaaSへと広がる事業構想だ。ここで重要なのは、これが単なるメディア戦略ではなく、コマースを含んだARPA(顧客単価)拡張モデルとして設計されている点である

 トレタ買収による予約台帳の獲得は、その象徴だ。集客、予約、来店、CRMまでを一気通貫でつなぐことで、店舗とユーザーの関係性そのものをLINE上に実装していく。コマースは「買う場」ではなく、「関係が続く場」へ。

 繰り返しになるが、他の競合モールにない要素として、LINEの価値を活かす視点で、地道に伸ばそうとしている姿勢が見られる。従来のようなEコマースのショッピングモールを起点に経済圏を動かすという動きは、もう見られない。今回の決算は、その新たな思想が数字として立ち上がり始めた瞬間だった。

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