LINEヤフー2025年3月期Q3決算|EC市場の成長率と課題を深掘り
LINEヤフー株式会社の2025年第3四半期決算が発表された。売上収益1兆4,287億円(前年同期比+6.1%)、調整後EBITDA3,634億円(同+16.1%)と過去最高を更新し、メディア・EC(コマース)・戦略事業(PayPayなど)すべての事業が増収増益を達成した。決算説明会では、「Yahoo!ショッピングは成長を続けている」「リユース事業(中古品販売)をBEENOS買収で強化する」といった方向性が語られた。
1. LINEヤフーの成長を支えた主要事業
EC事業(コマース)が売上をけん引
2025年第3四半期におけるLINEヤフーのコマース事業は、売上6,363億円(前年同期比+3.3%)、調整後EBITDAは1,181億円(同+15.3%)と、堅調な成長を遂げた。
EC事業の成長を押し上げた要因
・Yahoo!ショッピングの取扱高+9.5%増→ 11月・12月の販促施策や、12月から開始した「Yahoo!ふるさと納税」の影響で注文単価・注文者数が伸長
・ トラベル事業は+25.1%成長→ Yahoo!トラベル、一休.comの予約数が増加し、業績を大きく牽引
・ コスト削減が利益成長に貢献→ バリューコマースやIPXの非連結化により、原価・販管費の改善
2. リユース(中古品販売)事業の足踏み
Yahoo!フリマの取扱高は好調だったが、Yahoo!オークションの落札者数が伸び悩み、全体のリユース取扱高は前年同期比で-2.4%減少。これは、中古品市場において「新品志向」が強まっている可能性があり、メルカリのようなフリマアプリの勢いに押されていることも考えられる。
そこでLINEヤフーは、リユース事業を再成長させるために、中古品売買プラットフォームを運営するBEENOSを約540億円で買収。これにより、越境EC市場を活用して、国内リユース市場の成長鈍化を補う狙いがある。しかし、この戦略が軌道に乗るには時間がかかる可能性が高い。
3. バリューコマースの非連結化の影響
EC事業の売上が伸び悩んでいる背景には、バリューコマースの非連結化も影響している。
・2024年5月にアフィリエイト事業を手がけるバリューコマースが非連結化され、一部売上がカウントされなくなった。
・その結果、EC全体の売上収益にはマイナスの影響が出た。
こうした要因が重なり、EC事業の売上成長率が抑えられた形になっている。
4. 今後のEC戦略と成長のカギ
リユース事業の成長が鈍化しているとはいえ、LINEヤフーは今後の成長に向けた手を打っている。
特に、以下の施策がカギとなるだろう。
1. 越境ECへの本格参入
BEENOSは、仲介型の越境EC市場でシェアトップの企業であり、過去3年間のCAGR+30%という高成長を記録している。ここで、Yahoo!オークションやYahoo!フリマと連携し、「中古品を海外市場に流通させる」ことで、成長鈍化を打破する狙いがある。
以前から記事でも書いている通り、比較的、
・BEENOS買収の狙い
• リユース事業(Yahoo!オークションなど)の成長鈍化を補う
• 越境ECの取扱高を強化し、CAGR+10%の成長を目指す
• LINE台湾・タイとの連携で、海外市場の販促を強化
決算説明会では、「BEENOSの買収によって、Yahoo!オークション・フリマの出品数増加が期待できる」としていた。この施策がうまく機能すれば、リユース事業の収益性向上が見込める。
2. Fintechとの融合
PayPay連結の成長を生かし、EC決済と金融サービスを一体化することで、消費者にとって利便性の高い購買体験を提供。
総括すれば、LINEヤフーの2025年第3四半期決算では、EC事業の成長が続いているものの、やや鈍化の兆しも見える。特に、物販系ECの成長率の低下、リユース事業の落ち込み、バリューコマースの非連結化が影響している。
ただし、BEENOS買収による越境EC強化、ライブコマースの可能性、Fintechとの融合など、今後の成長を支える要素は十分にある。EC市場が成熟化しつつある中で、LINEヤフーがどのように戦略を打ち出すのかが、今後のカギとなる。
今日はこの辺で。
※写真の出澤氏は、以前の決算発表でのもの。