キリンの新事業「premedi」全国展開開始ー調剤薬局の在庫管理を効率化する置き薬サービス
キリンホールディングスは、高田製薬との協業を通じて、調剤薬局向けの置き薬サービス「premedi(プリメディ)」の全国展開を2024年10月1日から開始します。このサービスは、2023年11月に一部地域で試験的に導入され、現在では130店舗に広がっています。今後、医療のデジタル化(DX)の進展に伴い、薬局が扱う薬の品種が多様化することが予想されており、premediはその解決策として期待されています。
調剤薬局を取り巻く課題と医療DXの進展
医療領域では、近年DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進され、2023年1月からは電子処方箋が導入されています。
これにより、患者は場所に関係なく自由に薬局を選べるようになりましたが、薬局側には新たな課題が生まれています。それは、複数の医療機関からの処方に対応するため、幅広い種類の薬を常備する必要が出てきたことです。
しかし、すべての薬を多量に在庫として抱えることは、在庫リスクや廃棄リスクを伴います。そこで、キリンはAIを活用した薬局向けの置き薬サービス「premedi」を開発。薬局ごとにAIが利用頻度を予測し、少量で効率的に薬を配置することで、これらの課題に対応します。
「premedi」とは
premediは、キリンのAI技術を活用し、調剤薬局ごとの薬の使用傾向を予測して最適な在庫を提供するサービスです。薬局ではあらかじめ選定された医薬品のリストから必要なものを選び、小ロットで購入・管理することができます。これにより、在庫切れや廃棄のリスクを最小限に抑えつつ、患者のニーズに対応した医薬品を迅速に提供することが可能になります。
また、期限切れが近い薬品は販売パートナーが買い取る仕組みがあるため、薬局側は新鮮な医薬品を常に取り揃えることができます。このサービスは、特に取り扱い頻度の低い薬品の管理において非常に有効です。
高田製薬との協業による全国展開
キリンは、2024年10月より全国の薬局でpremediを展開するために、高田製薬の協力を得ています。高田製薬のMR(医薬情報担当者)が各地の薬局に訪問し、premediの提案や医薬品の情報提供を行います。また、キリンと高田製薬が共同でセミナーや展示会を開催し、薬局業界の最新動向についての情報共有を進めていく予定です。
これまで、東京や神奈川、愛知、福岡などの一部地域での試験運用に留まっていたpremediですが、今後は日本全国へとサービスが拡大される見込みです。これにより、さらなる薬局の効率化と患者の利便性向上が期待されています。
各社からのコメント
キリンのヘルスサイエンス事業部長である西前純子氏は、「高田製薬は常に私たちと同じ目線で考え、協力を惜しまず推進してくれています。品質本位・お客様本位の姿勢には共感を覚え、共にこの事業を進めるパートナーとして非常に心強く感じています」と述べています。
一方、高田製薬の三浦智広氏は、「premediは顧客や患者に大きな利便性を提供できる新しいソリューションであり、キリン社の想いを日本全国に広げるために全力で取り組んでいます」と語っています。
調剤薬局の未来を見据えて
premediの全国展開は、単なる薬の置き薬サービスにとどまらず、調剤薬局の業務効率化や患者満足度の向上に貢献する革新的な試みです。キリンは、医療DXの進展に対応しながら、全国の調剤薬局が多様な薬を迅速かつ効率的に提供できるよう、サービスの提供を加速させていきます。
さらに、この取り組みは、厚生労働省が掲げる「かかりつけ薬剤師・薬局の推進」にも貢献し、地域に根ざした薬局サービスの向上を目指しています。キリンは、CSV(Creating Shared Value)経営の一環として、premediを通じて社会的価値と経済的価値の両立を実現していく考えです。
結論
医療DXの時代において、調剤薬局が抱える課題に応えるための新しい解決策として登場した「premedi」。全国展開によって、より多くの薬局がこのサービスを導入し、患者にとっての利便性向上と薬局業務の効率化が一層進んでいくことが期待されます。キリンと高田製薬の協業は、これからの調剤薬局の在り方を大きく変える可能性を秘めています。