通販と物流の“レベル”に応じて変わる協力関係
JECCICAコラムまとめレポート
ネット通販が盛り上がるほど、物流の重要性も叫ばれるようになりましたが、一口に“物流”といっても、その活かし方は企業の規模感やブランドの個性によって大きく異なります。今回はJECCICA掲載コラムから、「スタートアップ的な通販×物流」と「大手通販×物流」の好例を比較しながら、どう付き合い方を変えていくかを考えてみましょう。
1.スタートアップにフィットする“平準化×自動化”の仕組み
まず注目したいのが、オープンロジという企業の事例です。創業わずか2013年ながら、近年は大手の住友商事や住商グローバル・ロジスティクスと提携を結ぶなど、急成長を遂げています。
• 特徴:荷主(EC事業者)の商品を多数の倉庫や配送業者と効率的につなぎ、物流を“平準化”&“自動化”する。
• メリット:初期費用不要の従量課金制や、バックエンド業務の圧倒的な簡略化。
ECにリソースを十分に割けないスタートアップや小規模事業者にとって、オープンロジのような形で「安定した物流網を手軽に利用できる」のは大きなアドバンテージとなります。
2.本格化する通販に不可欠な“カスタマイズ”
一方で、企業の規模が拡大し、ブランド力が高まるほど、“物流のカスタマイズ”が求められます。その好例が流通サービスという会社が担う「オルビス」の物流。
• オルビスは通販で基礎化粧品やスキンケアを販売し、1日数百件の発送だった時代から流通サービスと協力。
• 需要の増大にともない、AGV(自動搬送ロボット)を導入して処理能力を大幅にアップ。
ポイントは、単に既存のAGVを導入するだけではなく、“オルビス”仕様にカスタマイズした点です。オルビスの通販は「1件の受注につき8~10件のピックが必要」など、独自のセット販売・サンプル提供が多い。そこで、既存ロボットを改良し、1オーダーに1台のAGVを割り当てるモデルを開発しました。
3.投資と成果の“ウィンウィン”を生む関係
物流会社・流通サービスはこの導入に約10億円を投じ、結果として処理能力を導入前の1.3倍(1800件/時→2400件/時)に引き上げることに成功。オルビスの通販拡大を後押しすると同時に、物流会社としての収益にも返ってくる仕組みを築いています。
• カスタマイズへの投資が大きい:しかし長年の関係性や、オルビスブランドの成長見込みがあるからこそ、大胆な投資が成り立った。
• “AGVの性能”ではなく、“通販企業の特徴をどこまで理解し、反映できるか”が鍵。
4.“同じ物流”でもEC規模やブランド力に応じて変わる
以上の事例を見ると、企業のステージや通販ビジネスの方向性によって、物流との付き合い方が大きく違うことがわかります。
• 小規模・スタートアップ系EC:標準化・自動化に強みを持つサービス(例:オープンロジ)を活用すれば、低コストでバックエンドを整備しやすい。
• 大規模・ブランド力のあるEC:長い付き合いの中で、お互いの強みや特徴を理解し合い、オリジナル仕様を構築することで圧倒的な効率化や差別化が可能。
つまり、“物流=コスト”だけと捉えるのではなく、自社の成長ステージに合わせて“いかに味方にするか”が今後のEC戦略のポイントになるわけです。
5.145MAGAZINEとしての視点
僕自身、EC業界を取材するなかで、「規格品としての物流」「カスタマイズしてこそ輝く物流」の両極があると感じています。コストと効率だけを追う段階を経て、規模が伸びてきたら次は“物流でどんな新しい価値を作るか”を考える。
• AGV導入のようなハード面での投資はもちろん、データ連携や顧客体験の向上など、幅広い切り口がある。
• どちらにしても、“目先の配送費”だけではなく、自社ブランドの成長につながる施策になっているかどうかが鍵になるでしょう。
6.JECCICAコラムでさらに詳しく
今回紹介したオープンロジや流通サービスとオルビスの事例は、JECCICA公式サイトのコラムで詳しく解説しています。興味がある方は、ぜひ以下リンクからご覧ください。
通販のレベルで「物流」の役目はこうも変わる
https://jeccica.jp/the-role-of-logistics-changes-at-the-mail-order-level/
自社の通販ステージに合わせ、物流を“縁の下の力持ち”から“成長のエンジン”へと変えるヒントを得ていただければ嬉しいです。
まとめ
1. スタートアップ向けの平準化モデル
• オープンロジのように、初期投資不要の仕組みでEC始動期の悩みを解消。
2. ブランドや規模が拡大するほどカスタマイズが必要
• オルビス×流通サービスのように、企業の個性に合った物流を構築し効率UP。
3. 目先のコスト削減以上の“価値創造”
• 長期的に見れば、物流面の工夫がブランド強化や売上拡大を後押しするケースも多い。
物流はECの裏方でありながら、実は大きな差別化の武器になり得ます。自社の現状や未来像に合った物流戦略を見極めることが、ネット通販の成功を左右するでしょう。