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H2O 2020年3月期 決算、 時代に残されつつある 百貨店

阪急阪神百貨店などを傘下にもつエイチ・ツー・オー リテイリング( H2O )は 2020年3月期 決算 説明会を行い、それによれば、売上高は8972億円で、対前年比96.8%、営業利益が111億円で、対前年比54.7%、経常利益が118億円で対前年比55.3%となっている。

1.H2O 2020年3月期の決算概要

エイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)は、2020年3月期決算において以下の通りの業績を発表した。

  • 売上高:8972億円(前年比96.8%)
  • 営業利益:111億円(前年比54.7%)
  • 経常利益:118億円(前年比55.3%)

百貨店事業と食品事業の売上高

  • 百貨店:4732億円(前年比95.7%)
  • 食品事業:3541億円(前年比96.3%)

これらの数字から、百貨店事業の落ち込みが特に大きいことがわかる。

H2O20203月期決算

2.百貨店事業が抱える課題

インバウンド需要の減少

前年までは訪日外国人(インバウンド)需要に支えられていた百貨店売上だが、以下の要因で大きく減少している。

  • • 消費税増税
  • • 暖冬による秋冬物ファッションの販売不振
  • • 新型コロナウイルス感染症拡大
  • 消費税増税と暖冬の影響で秋冬ファッション商品の売れ行きが悪く、粗利率が低下している点が特に厳しい。

新型コロナウイルス感染症拡大下での販売低迷

  • • 2020年4月の緊急事態宣言発令後は、百貨店は全面休業(一部食品売場を除く)を余儀なくされた。
  • • 4月の百貨店売上(既存店ベース)は前年比**20%**まで落ち込んだ。

結果として、百貨店事業の構造的課題が一層浮き彫りになっている。

3.食品事業(イズミヤ・阪急オアシス)の方向転換

イズミヤの一体運用と成果

  • • スーパーマーケット「イズミヤ」は食品売上高の7割を占めており、「阪急オアシス」との一体運用によって成果を上げている。
  • • 4月の食品事業は前年同月比で107%(イズミヤ)、108%(阪急オアシス)と好調。

テナント化による事業再編

• 衣住関連分野はテナント化を進め、化粧品部分はココカラファインとの合弁会社「CFIZ」を通じたドラッグストア展開を検討。

• これに伴う早期退職など、人員削減策も進められている。

4.根本的問題:過去への依存と変化の遅れ

暖冬を理由にできないビジネスモデルの限界

  • • 毎年、天候や季節要因に左右されるビジネスモデルそのものが限界を迎えている。
  • • ファッションをはじめとする大量生産・在庫廃棄・セール頼みの従来のやり方では、収益性を維持しづらい。

変化する小売の在り方

  • • Zaraなどのように、製造から販売までを一体化して生産量をコントロールし、高速サイクルで商品を投入する形態が台頭。
  • • 旧来の百貨店のようにブランド力と大量生産に依拠するモデルは、環境変化への対応が遅れがち。

5.新型コロナウイルス下で問われるデジタル戦略

デジタル化が目的化しないために

  • • 新型コロナウイルス感染拡大は、対面販売中心の百貨店に深刻な影響を与えた。
  • • しかし、根本的には今までの営業形態に固執してきたことが変革を遅らせる原因にもなっている。

顧客との関係性構築と売上維持

  • • 多くの企業がデジタル化を進めるなか、百貨店も自らの強みを見直しつつデジタル戦略を本格化すべき。
  • • デジタルを用いて顧客とのつながりを強め、外部環境に左右されにくい収益基盤を構築することが急務である。

6.まとめ:百貨店モデルからの脱却が急務

  • • H2Oの2020年3月期決算は、消費税増税や暖冬、そしてコロナ禍の影響が重なり、百貨店事業の脆弱さを浮き彫りにした。
  • • イズミヤなど食品事業では一定の成果が見られる一方、百貨店事業は今後の方向性を打ち出しきれていない。
  • • 百貨店を含むアパレル小売業界全体が、従来の大量生産・在庫処分型モデルから、必要な量を適時投入するモデルへと転換を図る必要がある。
  • • デジタル化の推進は不可避であり、単なるオンライン化にとどまらず、顧客のライフスタイルに寄り添う新たなビジネスモデルの構築が課題となっている。

以上のように、H2Oの決算を通じて見える百貨店ビジネスの停滞要因は、従来型のモデルへの依存とデジタル化の遅れである。これを機に、事業構造を根本的に見直すことが求められているといえるだろう。

 

 

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