フューチャーショップの業績概要:着実な成長と機能強化
フューチャーショップ株式会社(以下、フューチャーショップ)が提供するECサイト構築支援サービス「futureshop」の事業概要や機能強化の背景に加え、昨今のEC市場を取り巻く環境、そしてそれらが同社の売上高・利益の伸びにどのように影響しているのかを、もう少し深掘りして解説します。
1. 近年のEC市場を取り巻く環境
1-1. EC利用の拡大と多様化
• オンラインショッピングの習慣化
新型コロナウイルス感染拡大以降、消費者の買い物行動が大きく変化し、実店舗からオンラインストアへのシフトが加速しました。その流れはコロナ禍の収束が見え始めた今も続いており、EC利用は生活の中に定着しています。
• デバイス・チャネルの多様化
スマートフォンでの購入が主流となる一方、SNS(Instagram、TikTokなど)や動画サービスなどから直接購入できる「SNSコマース」「ライブコマース」も注目を集めています。このようにチャネルが多様化することで、事業者側には複数の販売経路を最適に管理・運営する体制が求められています。
1-2. D2Cブランドの台頭
• 自社ECサイトによるブランド価値向上
大手ECモールへの出店だけでなく、自社でブランド体験をコントロールするD2C(Direct-to-Consumer)形態のECが注目されています。独自ブランドを展開する企業や新興スタートアップが自社ECサイトを立ち上げるケースが増え、差別化のために機能性やデザイン性に優れたプラットフォームの需要が高まっています。
1-3. 市場拡大に伴う競争激化
• 海外勢や新興サービスの日本進出
Shopifyをはじめとする海外のEC構築プラットフォームが日本市場で存在感を強め、日本国内ではBASEやSTORES、MakeShopなど、多様なSaaS型ECサービスが乱立・競合しています。
• コスト最適化・運用効率化への要求
事業者にとっては、単にオンラインストアを開設するだけでなく、受注~在庫管理~配送といったバックエンド業務まで、一貫して効率的に行う仕組みが必要となってきました。物流費や広告費が上昇傾向にある中で、コスト削減と売上向上の両立が急務となっています。
2. フューチャーショップのソリューション強化ポイント
2-1. 「Commerce Creator」の強化と新機能リリース
• 2024年6月に「配送・送料機能 upgrade版」をリリース
フューチャーショップでは、運用の効率化や柔軟な送料設計をサポートする「配送・送料機能 upgrade版」を「Commerce Creator」機能の一環として提供開始しました。これにより、以下のメリットが期待できます。
1. 複数の運送会社の送料を一元管理
送料体系の複雑化や配送オプションの多様化に対応しやすくなる。
2. 地域や商品属性に応じた細かな設定
遠方や離島向け送料の個別設定やクール便等、特別料金が発生する商品の取り扱いなどを柔軟に行える。
3. キャンペーンや同梱割引との連動
販促の際に送料を割引したり、複数商品を同梱時の送料優遇を簡単に設定できる。
2-2. 価格改定とサービスの付加価値向上
• 2024年6月の価格改定
2024年6月に一部料金プランの改定が行われました。EC構築サービスは、今後も開発・保守運用にコストがかかるだけでなく、利用者側からも機能拡充の要望が高いため、適切なタイミングでの価格改定はサービス品質維持のためにも必要とされます。
• 顧客基盤の拡大と高付加価値化
新機能追加や既存機能のアップグレードによって、EC事業者の運用効率改善や売上向上を支援する「付加価値」が高まることで、価格改定後も利用を続ける顧客が多く、結果的に売上増加と利益率向上に寄与しています。
3. 2025年3月期第1四半期の業績への影響
3-1. 売上高の伸び
• 売上高は前年同期比6.0%増の6億6,324万円
EC市場の堅調な拡大、およびフューチャーショップの新機能提供により顧客が利便性を実感し、引き続き利用・導入が進んでいることが要因です。さらに、前述の価格改定分も上乗せとなり、売上高の増加に寄与しました。
3-2. 営業利益の改善
• 営業利益は前年同期比8.8%増の2億172万円
新規導入顧客の増加と機能強化による既存顧客のアップセル・継続率向上が同時に起きたことで、利益率も改善傾向にあります。また、同社ではバックエンドやサポート体制の効率化も進めており、コストコントロールがうまくいっていると考えられます。
4. 今後の展望と課題
4-1. 多チャネル連携の重要性
SNSコマースやライブコマースをはじめとした販売チャネルが拡大する中、EC構築プラットフォームにも、複数チャネルを一元管理する機能や在庫・受注連携が求められています。フューチャーショップも、「Commerce Creator」などの拡張性を高めることで、顧客があらゆるチャネルから最適に販売できる仕組みを提供し続ける必要があります。
4-2. ロジスティクス・配送コストの最適化
EC事業者にとって配送コストは利益を圧迫する大きな要因のひとつです。複数の物流会社を柔軟に使い分けたり、地域別・重量別の細かい送料設定を行う機能は、今後もさらに重要度を増していきます。フューチャーショップの「配送・送料機能 upgrade版」は、こうした課題に対応するソリューションとして今後も注目されるでしょう。
4-3. データ活用・パーソナライズの深化
顧客体験を向上させるために、サイト内のレコメンドやメール配信、カート放棄対策などデータを活用したマーケティング手法が今後さらに必要となります。フューチャーショップのプラットフォームがデータ基盤や外部ツール連携をどこまで充実させるかが、差別化の大きなポイントとなります。
4-4. 競合他社とのサービス差別化
海外勢を含む多くのSaaS型ECプラットフォームが存在する中で、フューチャーショップは国内の運用ニーズ(決済方法、配送、サポート体制など)を強みに顧客基盤を維持・拡大してきました。今後はさらに、UI/UX面の充実やデータ連携機能の拡充による付加価値提供が求められ、競争はますます激化が予想されます。
まとめ
2025年3月期第1四半期において、フューチャーショップはEC事業者の課題を的確に捉えた機能強化と価格改定によって増収増益を達成しました。ECを取り巻く環境は、コロナ禍で加速したオンライン化からさらに多チャネル化へ移行し、配送や在庫管理を含む運営の複雑さが増す方向に進んでいます。
こうした中でも、「配送・送料機能 upgrade版」 や 「Commerce Creator」 を活用した柔軟なサイト構築・運用体制が評価され、フューチャーショップは堅調に顧客数を増やし、利益を伸ばしています。今後は、市場全体のさらなる成長が見込まれる一方で、サービス品質向上や追加機能開発、他社との差別化による継続的な顧客満足度向上が、同社の中長期的な成長を支えるカギになるでしょう。