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“触れられない時代”に、なぜリアルが必要なのか──楽天・Jackery・ドウシシャが語った、体験から始まる新しい家電選び

序章|ECが成熟したからこそ、リアルの“温度”が必要になった

 家電市場は今、かつてない豊かさと、かつてない“迷い”が共存している。ECで買える商品は増え、比較も容易になった。しかしその一方で、家電量販店では盗難防止のためモック展示が増え、ユーザーは“触れずに高額商品を買う”という矛盾に晒されている。

 スペックは似通い、レビューは氾濫し、ランキングは更新され続ける。

 けれど——最後の判断に必要なのは、重さ・音・質感・空気、そして“人から直接聞く言葉”だ。

 その不足を補うように、楽天が二子玉川で初開催した「楽天 家電まつり」には、多くの家電メーカーが集まり、ユーザーが“触って選べる場”をつくり上げた。

 このイベントの本質はただ一つ。

「家電は体験してこそ、初めて“選べる”ようになる。」

 楽天、Jackery、ドウシシャ——三社の語りを紡ぐと、その思想が驚くほど一致して浮かび上がる。

第1章|楽天:オンラインとリアルの分断をつなぐ、体験設計の再編集

1-1|“家電を触れない時代”に、リアルイベントを仕掛けた理由

 坂本崇樹さん(アカウントイノベーションオフィス)は、今回のリアルイベントの背景をこう語った。

「家電は高い。失敗したくない。だからこそリアルが必要なんです」

 楽天市場では「家電まつり」をスーパーSALE内で展開してきた。しかし、ユーザーが抱える根源的な不安——「本当にこれを選んでいいのか?」。その迷いは、画面上では解消できないと坂本さんは見抜いていた。

 だからこそ今回は、

・体験できる家電ブース

・クイズ式スタンプラリー

・子どもが楽しめるレゴの導線

・その場からECへ飛べるQR

を組み合わせ、“家族が安心して選べる場所”をつくった。

 そして坂本さんが強調したのは、この一言である。

「非効率なんですけどね。でも、人の気持ちを間近で感じるのは大事なんです」

 EC企業が“非効率を取り戻す”という逆説的な挑戦は、買い物体験そのものの再設計を意味している。

1-2|家電選びは“触れて納得し、オンラインで買う”時代へ

 今回のリアルイベントは、単にメーカーが集まる展示ではない。楽天は、オンラインとオフラインをつなぐ“導線の物語化”に挑んだ。リアルで理解し、オンラインで買う——その導線は、次のように整理されている。

  1. リアルで理解する(スタッフの説明・実機体験)
  2. オンラインでお得に買う(クーポン・ポイント・QR)
  3. 楽天会員として価値が積み上がる

 楽天が見据えているのは、「オンラインとリアル、どちらかではなく“両方を編集する未来”」。

第2章|Jackery:“電気を持ち歩く”という新しいインフラの思想

2-1|スペック競争の終わりに、“存在理由”で勝負するブランドへ

 ポータブル電源市場は成熟し、多くのメーカーが横並びだ。犀川雅未さん(広報)は言う。

「今はもうスペックも価格も選びようがないほど似ています」

 だからこそ Jackery は、“ポータブル電源とは何か”という原点に立ち返る必要があった。

2-2|Jackeryの“商品としての魅力”

 Jackery の製品は、単に“屋外で使える電源”ではない。小型で持ち運びがしやすい 240Wh クラスから、電子レンジや冷蔵庫を動かせる 1500Wh 以上の大容量モデルまで、“電気を持ち歩く”という生活行動そのものをデザインしているプロダクトである。

 家庭用コンセントと同じ純正弦波のAC出力、スマホやPCを同時に充電できる複数ポート、安全性の高いリン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO₄)など、アウトドアから停電時まで“日常と非常時をまたぐ電源”として成立させるための思想が細部に宿る。

 また、ソーラーパネルと組み合わせて太陽光で充電できる点も特徴で、災害時のライフライン確保において大きな価値を発揮する。持ち歩けるのに家電が動く——この“ギャップの体験”こそが、Jackery を他社と一線を画す魅力となっている。

2-3|“防災 × 日常”をつなぐフェーズフリー思想

 ここで Jackery を象徴するのが、社員文化だ。

「社員の多くが防災士。備えを理解して届けるためです」

 能登半島地震では 260台の電源を提供し、通信復旧に必要なスターリンクを動かす基盤として活躍した。“電気を持ち歩く”とは、アウトドアの楽しみではなく、生活の中にインフラを持つという思想である。

2-4|リアルで触れなければ伝わらない価値

 犀川さんがイベントで強く感じたのは、「実物を触らないと良さが伝わらない」ということだった。量販店ではモック展示が多く、重さも質感も操作性も分からない。今回のイベントでは、初めて Jackery を知る層が多く、それが最大の収穫になったという。

 Jackery が見つめるのは、防災でもアウトドアでもなく——“暮らしの一部としての電源”という未来だ。

第3章|ドウシシャ:生活者の“違和感”をすくい上げる、実験精神のブランド

3-1|SNSで話題の“ゴリラシリーズ”がリアルで爆発した理由

 ドウシシャのゴリラシリーズは、SNSで火がついたブランドだが、実は「試せない」という課題を抱えていた。白石圭司さんはこう語る。

「SNSで見ました。でも試す場所がなかった」

リアルで体験できる今回の場は、ドウシシャにとって大きな意味を持つ。

3-2|ゴリラシリーズとは何か

 ゴリラシリーズは、単なる家電ブランドではない。生活の“ちょっとした違和感”を拾い、便利さだけでなく“快適さや個性”を届けるためのプロダクト群である。健康家電「ゴリラのひとつかみ」「ふたつかみ」、足裏用「ひとつき」、手を包む「握手」、さらには着圧ソックス「ベビーゴリラ」まで。

 “強め・深め”の刺激、遊び心のある世界観、たった10秒で直感的に使える設計——すべてが、生活者の“違和感”を楽しさに変えるために作られている。

3-3|ヒットを生むのは“社員の違和感”だった

白石さんは語る。

「強すぎる刺激が、逆に“ちょうどいい”と言われた」

これは偶然ではなく、若手社員の着想がそのまま商品化される文化があるからだ。入社3年目の社員が企画した商品が、その後、シリーズの核になるという事実は、生活者視点が開発の中心にあることを示している。

3-4|“商品を立てる会社”としてのドウシシャの哲学

 個人的な印象で恐縮だが、ドウシシャは企業名を前面に出さず、“商品そのものを立てる” という稀有なメーカーである。ユーザーは買ってから裏を見て、「あ、ドウシシャだった」と気づく。それは控えめではなく、“商品力への自信” の表れだ。リアルの場でユーザーと対話する今回のイベントは、その哲学を可視化した瞬間でもあった。

 ただ、ある種、今回はゴリラたちが、ドウシシャという会社の魅力に触れるきっかけにさせてくれただろうと思うし、そこにこのイベントとしての意義があると思う。

第4章|三社が示した未来:体験がECを押し上げる

 楽天、Jackery、ドウシシャ。立場も商品も違う三社だが、結論は共通している。

ECの時代だからこそ、リアル体験の価値はむしろ増している。

  • 楽天は、家電選びの“不安”をリアルで解消し、ECへつなぐ導線を作った。
  • Jackery は、スペックを超えた“思想と体感”のブランドへと進化している。
  • ドウシシャは、生活者の違和感をリアルで拾い、商品に変換している。

リアルで理解し、オンラインで最適に買う。

体験が購買を押し上げ、ECの価値を伸ばす。これは家電の話ではなく、“ものを選ぶ行為そのものの再定義”だ。

結章|体験から始まる購買行動へ

 二子玉川ガレリアで広がった“体験の空気”は、ECが成熟した今だからこそ価値を持つ。

 人は本来、触れて・話して・納得して選びたい生き物だ。その原点を楽天が再び照らし、Jackery とドウシシャのような会社とともに、商品で証明したことが大きい。今回のイベントが示したのは、ECの“次のシーン”の始まりなのかもしれない。

今日はこの辺で。

 

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