1. HOME
  2. event
  3. 事業
  4. アマゾン2025年Q3決算:AWSが+20%で再加速、AI投資と広告好調で成長軌道へ

アマゾン2025年Q3決算:AWSが+20%で再加速、AI投資と広告好調で成長軌道へ

2025年の夏、アマゾンの決算に再び光が差し込んだ。売上高は1,801億7,000万ドル(前年同期比+13%)と、2桁成長を維持。特にクラウド事業のAWSが+20%と、久々に勢いを取り戻した。営業利益は174億ドルと前年並みだが、その裏ではFTCとの和解金25億ドル人員再配置・退職関連費18億ドルといった一時的な負担が重くのしかかっていた。

数字の見た目以上に、“中身”は力強い。

「AWSが再加速」──生成AIが追い風に

ここ数四半期、AWSは成長の再加速に向けて息を整えてきた。そしてこの7–9月期、ようやくそのエンジンが本格的に動き出した。

売上は330億ドル(+20%)営業利益114億ドル(+9%)

企業の間で生成AI(Generative AI)への投資熱が一気に高まり、クラウドへの需要が戻ってきたのだ。

では、なぜAWSがこの波にうまく乗れているのか。理由のひとつが、アマゾンが進めるAI向けインフラの自前化にある。

AI時代の“土台”を自ら作る──BedrockとTrainium 2

アマゾンは今、AI時代の「足場」を自らの手で築いている。その象徴が、AIモデルを簡単に使える基盤サービス「Bedrock(ベッドロック)」と、AI向け自社チップ「Trainium 2」だ。

Bedrockは、企業が自社アプリに生成AIを組み込むためのプラットフォーム。「Anthropic(Claude)」や「Meta(Llama)」、アマゾン自社の「Titan」など、複数のAIモデルを選び、APIで呼び出せる。つまり、AIを“自分で作る”のではなく、“AWS上で選んで使う”時代を切り開いているのだ。

一方で、Trainium 2はアマゾン独自のAIチップ。これを膨大な数組み合わせ、パートナー企業Anthropic向けに約50万個規模のAIチップクラスターを構築している。AIモデルを学習させるには莫大な計算力が必要になるが、アマゾンはその“計算の心臓部”をも自前で用意しようとしている。

AWSは、まさに「AI開発のインフラそのもの」になろうとしているのだ。

北米は一過性費用に沈むも、基礎は堅調

北米事業は売上1,063億ドル(+11%)と堅調。プライム会員の購買頻度も高止まりしており、消費は底堅い。営業利益は47億ドル(-15%)と見た目は減益だが、FTC和解金25億ドルを除けば前年を上回る。

物販に依存せず、広告やサブスクリプションといった利益率の高い事業構造への転換が着実に進んでいる。

広告ビジネスが“静かなる主役”に

今やアマゾンのもう一つの稼ぎ頭となったのが広告事業だ。

この四半期は177億ドル(+24%)と大幅増。YouTubeやMetaと並ぶ存在感を放つ。AIを活用したおすすめ表示や、会話型ショッピングAI「Rufus」がユーザー体験を進化させ、購買完了率を押し上げている。

もはやアマゾンの広告は“単なるバナー”ではなく、“購買を導くAIアシスタント”になりつつある。

投資とキャッシュフロー:今は「筋トレ期間」

キャッシュフローに目を向けると、営業CFは1,307億ドル(+16%)と過去最高を更新。ただし、フリーキャッシュフローは148億ドルまで落ち込んだ。

理由は明確だ。AIデータセンターへの設備投資が前年比で+509億ドルと跳ね上がったためだ。経営陣は「これは未来への投資だ」と説明する。

短期的にはFCFが圧迫されても、AIインフラを早期に整えることで、次の成長サイクルを掴みにいく構えだ。

純利益は投資評価益で押し上げ、EPSは1.95ドルに

営業段階では横ばいだが、最終利益は211億9,000万ドル(+38%)と大幅増。背景には、パートナーのAnthropicへの投資評価益(税引前95億ドル)がある。

つまり、事業面では堅実に、投資面では果敢に攻めた——。

バランスの取れた「攻守両立」の決算と言える。

Q4見通し──ホリデー商戦で再び最高益圏へ

次の四半期(10〜12月期)は売上2,060〜2,130億ドル(+10〜13%)、営業利益210〜260億ドルを見込む。

AWSのAI案件が伸び、ホリデー商戦も控える。年末に向けて再び過去最高益圏を狙う。

アマゾンが描く「AIとリアルの両輪」

今期の決算を通して見えるのは、アマゾンが「AIで成長を再加速させる」道筋をつかみ始めたということ。AWSはAIの波で息を吹き返し、広告は新たな収益の柱に。

そして、過去の和解や再編費用を一度に処理したことで、次の四半期はより身軽に動ける。フリーキャッシュフローが減っているのは、“体を鍛えている最中”だから。

アマゾンは今、未来のために筋肉をつけている。

2025年Q3は、その準備運動を終えたことを知らせる決算だった。

Current NEWS

“情報”を追う | 事業