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イオン決算2025年2月期|営業収益10兆円超、利益構造の転換期へ

10兆円突破のその先に何があるのか

2025年4月11日、イオン株式会社が発表した2025年2月期の連結決算は、売上高が初めて10兆円を突破するなど、表面上は大きな成果を収めた内容だった。しかしその裏では、親会社株主に帰属する当期純利益が前年より35.6%減少するなど、構造的な課題も浮き彫りになっている。本稿では、決算数値の変化を丁寧に追いながら、事業ごとの状況と今後の展望を考察する。

【1】グループ全体:営業収益は過去最高、だが利益面は減速

  • 営業収益(2025年2月期):10兆1,348億円(前年比 +6.1%)
  • 営業利益:2,377億円(前年比 -5.2%)
  • 経常利益:2,242億円(前年比 -5.6%)
  • 親会社株主に帰属する当期純利益:288億円(前年比 -35.6%)

営業収益はついに10兆円を突破。4期連続で過去最高を更新した 。しかし、利益面では前年に記録した過去最高益には届かず、特に純利益の落ち込みが顕著だった。これは、構造改革に伴う特別損失の影響も大きい。

【2】小売主力のGMS(総合スーパー)事業:赤字転落を回避も厳しい現実

  • 営業収益:3兆5,595億円(前年比 +2.6%)
  • 営業利益:163億円(前年比 -115億円)

GMS事業では、荒利率の改善と経費コントロールによって第4四半期(2024年12月〜2025年2月)は増益に転じたものの、通期では減益に終わった 。イオンリテール単体ではDX投資と人時生産性向上の効果が見られたが、価格競争が激化する中で採算改善は一筋縄ではいかない。

【3】SM(スーパーマーケット)事業:トップバリュ戦略が再加速

  • 営業収益:3兆600億円(前年比 +10.0%)
  • 営業利益:329億円(前年比 -89億円)

上期の天候不順が響き、荒利率の不足に苦しんだSM事業だが、下期には価格政策とPBの拡販が効果を発揮。グループ会社U.S.M.Hやマックスバリュ東海が持ち直したことで、Q4は増益に転じた 。PB売上も四半期ごとに上昇基調にある。

【4】総合金融事業:利益成長のエンジンに

  • 営業収益:5,304億円(前年比 +9.7%)
  • 営業利益:611億円(前年比 +99億円)

傘下のイオンフィナンシャルサービスは、国内外での決済・ローン事業が堅調。マレーシアで開業したデジタルバンク、ベトナムでのローン事業買収など、アジアにおける金融包摂の取り組みも着実に成果を挙げている 。

【5】ディベロッパー事業:モール再活性化で増益基調

  • 営業収益:4,961億円(前年比 +5.9%)
  • 営業利益:530億円(前年比 +56億円)

イオンモールが主導するディベロッパー事業では、国内外のモールが堅調。既存施設のリニューアルや、海外での戦略的出店が収益を押し上げた 。とりわけベトナムやインドネシアが新たな成長源として注目される。

【6】ヘルス&ウエルネス:調剤併設の進展とPB強化

  • 営業収益:1兆3,228億円(前年比 +7.1%)
  • 営業利益:360億円(前年比 -66億円)

ウエルシアを中心とするこの事業は、調剤併設店舗の増加が続いており、物販もPB拡充により底堅く推移 。タバコ販売の終了やヘルスケア路線へのシフトが今後のカギを握る。

【7】今後の見通し:2026年2月期は利益回復を目指す

  • 営業収益(予想):10兆5,000億円(前年比 +3.6%)
  • 営業利益:2,700億円(前年比 +13.6%)
  • 親会社株主に帰属する当期純利益:400億円(前年比 +39.0%)

構造改革を継続しつつ、営業利益・純利益の回復を狙う2026年2月期。セグメント間の明暗が分かれる中、成長を牽引する金融・不動産領域の動きが全体のバランスを保てるかに注目が集まる 。

締めのひと言:数字の裏側にある、未来への意思

今回の決算で印象的なのは、単なる減益ではなく、「次への布石」としての投資と再構築が色濃く現れている点です。定点観測を通じて見えてくるのは、「構造改革の進捗」と「収益性の質的転換」。変化の兆しを見逃さず、引き続きウォッチしていきたい。

今日はこの辺で。

 

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