米国の年末商戦、ネット通販が急伸:感謝祭からの5日間でオンライン購入者44%増
アメリカでは、11月の感謝祭(サンクスギビング)から本格的に年末商戦がスタートします。2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、消費者の行動にも変化が見られました。全米小売業協会(NRF)が12月1日に発表したデータから、感謝祭翌週の月曜日までの5日間(2020年11月26日~11月30日)における買い物客の動向を整理し、リアル店舗とネット通販の明暗を探ります。
1.5日間の買い物客数は2018年を上回る
• 総買い物客数:1億8,640万人
2019年(1億8,960万人)と比べるとやや減少したものの、2018年(1億6,580万人)を上回りました。
• 特徴:2020年はコロナ禍により、ネット通販での需要増加が顕著でした。
2.ネット通販の躍進:オンライン購入者44%増
- • オンラインのみの購入者数:前年同期比44%増の9,570万人
- • ブラックフライデー(感謝祭翌日)のオンライン購入者数:前年比8%増
- • ブラックフライデー翌日の土曜日の購入者数:前年比17%増
いずれもオンラインショッピングの伸びが際立っており、実際に「リアルからネットへのシフト」が数字に表れていることがうかがえます。
3.リアル店舗の落ち込み:感謝祭当日・ブラックフライデーともに大幅減
- • 感謝祭当日の実店舗来客数:前年比55%減
- • ブラックフライデー当日の実店舗来客数:前年比37%減
多くの小売業者が感謝祭当日に店舗を休業したことや、外出自粛の影響もあり、リアル店舗への客足は大きく落ち込みました。
4.消費総額は2019年より減少も、2018年とほぼ同水準
5日間の1人当たり平均支出額は前年同期比14%減の311.75ドルでした。2019年(361.90ドル)からは減少しましたが、2018年(313.29ドル)に近い水準です。
コロナ禍により外出しづらい状況とはいえ、消費者の購買意欲自体は大きく冷え込んでいない可能性がうかがえます。
5.前倒しセールとパンデミック下の消費者意識
NRFのアンケート調査によれば、多くの小売業者が10月からセールイベントを開始していました。実際に「前倒しで実施されたホリデーセールやプロモーションを利用した」と回答したのは52%に上ります。
- • パンデミックによる支出計画への影響
- • 55%が「ホリデーシーズンの支出計画に影響なし」と回答
- • ホリデー装飾・季節商品の購入意欲
- • 51%が「興味あり」と回答
- • 中小企業のサポート意識
- • パンデミック以前よりも積極的に支援したいとする回答が77%
消費者の購買意欲は依然として高く、むしろ「必要なものはネットで買う」という流れが加速しているようです。
6.ビジネスへの示唆:リアルのダメージをいかに補うか
消費者心理は大きく変わらずとも、行動はネットを中心にシフトしています。リアル店舗からオンラインへ販路を広げるなど、事業の構造を柔軟に見直し、ダメージを最小限に抑える施策が急務です。
おわりに
2020年の感謝祭から始まった年末商戦は、ネット通販の伸びとリアル店舗の落ち込みという明暗がはっきりした結果となりました。コロナ禍は引き続き予断を許さない状況ですが、企業にとっては新たな販売チャネルやプロモーション方法を模索し、これまでにない消費行動の変化に対応する必要があります。これまでとは異なる年末商戦をどう乗り越えるか、引き続き注視が必要です。