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Walmart FY26 Q3──“日常”を再設計する巨大流通の思想:売上成長+EC27%成長の裏側にある「人」と「現場」の変化

アメリカ小売の象徴とも言えるWalmartが、FY26 Q3でも揺るぎない存在感を示した。売上は5.8%増の1,795億ドル、そしてECは27%成長──数字だけを見れば「順調」の一言で片づけられるかもしれない。しかし、FY26 Q3の決算は単なる好決算ではない。変化の速い消費行動、急速に立ち上がるデジタル広告事業、FlipkartやPhonePeのダイナミックな動きなど、巨大企業の内部で“思想の転換”が着実に進んでいることを示している。

 この四半期、CEOダグ・マクミロンは「未来に対するこれまで以上の期待」を語り、自身の任期を振り返りながら後継への想いも示した 。その言葉に表れるのは、単なる成長ではなく、“企業の温度”としてのWalmartの姿。その全体像を、人と思想の流れの視点から読み解いていく。

決算全体像と時代背景

 FY26 Q3のWalmartが示したのは、「着実な成長」と「基盤の強化」が両立した、非常にバランスの良い四半期である。売上成長は+5.8%、為替中立ベースでは+6.0%と、鈍化する消費環境の中でも高い粘りを見せた 。背景には、広がる物価高の影響、購買の二極化、そしてデジタルシフトの加速という、世界的な消費構造変化がある。

 Walmartの決算を読む上で重要なのは、単に「売上が伸びている」ではなく、「どの領域が伸び、どの領域が変わっているのか」という“質”である。

 まず注目すべきは、グローバルECが前年同期比+27%と大きく伸びた点だ。Walmart USでは特に「店舗拠点を活用した即時配送」が急拡大し、3時間以内の配送が全体の35%を占め、前年比70%増という伸びを示した 。これは単なるECの増加ではなく、「店舗をラストマイル拠点へと再定義する」戦略が本格的に奏効していることを意味する。

 またグローバル広告事業も+53%と急成長を遂げ、Walmart Connect(US)だけでも+33%と存在感を高めた 。これは“小売 × 広告”という新しい収益源が確立したことを示しており、今後の利益構造の変化を示唆する。

 他方でWalmart Internationalは、FlipkartのBig Billion Daysのタイミングの影響やPhonePeの株式報酬費用などにより営業利益は減少したが、調整後ベースでは+16.9%成長と、実力値はむしろ強い 。地域ごとの動きは異なるものの、デジタル化と会員モデルを基点とした“共通指標”で強化が進んでいる。

 このようにFY26 Q3は、世界の消費環境が難しい中で、Walmartが“多層的な成長エンジン”を持つ企業へと変化した姿を映し出す四半期となった。

主要数値の変化と意味

 数字を深掘ると、Walmartの戦略がどの部位で効果を発揮し、どこに課題が残っているかが明確になる。

● 売上:+5.8%(1,795億ドル)

 Walmart USが+5.1%、Sam’s Clubが+3.1%、Internationalが+10.8%と、全セグメントで成長した 。とりわけInternationalの強さは、Flipkart(インド)と中国の伸びが牽引している。

● 営業利益:-0.2%(調整後+8.0%)

見た目は微減だが、最大の要因はPhonePe(インド)の株式報酬費用であり、実質的には8%増とポジティブな結果である 。

● 粗利率:+2bps

 米国での売上構成改善(広告や会員収入)によって底上げされている一方、Internationalではフォーマットミックス(オンライン比率上昇)で低下した 。これは “リアル+デジタル”の両立が引き起こす典型的な構造変化でもある。

● eCommerce:+27%

 この数字の重みは大きい。WalmartのECは単なるオンライン購入だけでなく、店舗をフル活用したハイブリッドモデルである点が特徴だ。

  • 店舗ピックアップ

  • 店舗から即時配送

  • Marketplaceの拡大

  • 広告(Walmart Connect)の成長

 これらが複合的に働き、Amazonとは異なる勝ち筋を描いている。

● Membership & Other Income:+9%

 Walmart+ や Sam’s Clubの会員収入が伸び、 recurring revenue(継続収益)の比率が高まった。会員ビジネスの堅調さは、Walmartの“毎日の生活基盤としての信頼性”が高まっている証左とも言える。

● Free Cash Flow:88億ドル(+26億ドル)

 営業活動キャッシュフローの増加により、潤沢な投資余力を確保した 。大型投資と株主還元を両立できる構造が整っている。

 これらの数値が示すのは、Walmartの強みが「規模」から「構造」へ移行しつつあるという点だ。

 小見出し3:経営者の発言や意図(800〜1000字)

今回の決算で、特に象徴的だったのはCEOダグ・マクミロンのコメントである。

“We’re well-positioned for a strong finish to the year and beyond… I’m as excited about the future of this company as I’ve ever been.”

(今年の後半、そしてその先に向けても非常に良い位置にいる。これほど会社の未来にワクワクしたことはない)

 単なるポジティブコメントに見えるかもしれないが、重要なのは「未来に対する熱量」である。

 Walmartのトップは、ECや広告事業の成長を“収益源の多角化”と捉えるだけでなく、企業文化や働き方、チェーン全体のオペレーションにまで深く影響する“変革の到来”として語っている。

特に

  • 店舗を在庫拠点から“配送エンジン”へ

  • 店舗スタッフを“Pick & Deliveryのプロ”へ

  • データを活用した広告事業を収益の柱へ

  • 国際市場ではデジタルネイティブ企業(Flipkart等)との共存

 こういった変化は、従来のWalmartとは異なる思想を反映している。

 マクミロンの語り口は「変化を楽しむ組織」を強調しており、これは巨大企業が停滞に陥らないための重要な示唆である。

 また次期CEOとされるジョン・ファーナーへのエールも語られ、Walmartが“世代交代期”に入っていることも印象的だ。組織としての若返り、意思決定スピードの向上を意図しているのだろう。

事業構造の変化とトレンド

 Walmartは今「小売企業」ではなく、“生活インフラ企業”へと変貌している。FY26 Q3の資料からは、その構造変化がより明確になった。

① 「店舗 × 配送」のハイブリッド化

 店舗からの即時配送が米国人口の95%をカバーし、3時間以内配送が急増している 。これはAmazonとの差別化であり、“物流戦略の逆転発想”でもある。

② 広告ビジネスの台頭

 Walmart Connectは+33%、グローバル広告は+53%と急成長 。スーパーが広告企業になる時代。購買データの価値はますます高まる。

③ Internationalのデジタル成長

 インド(Flipkart)、中国(Sam’s Club China)の成長は著しく、特に中国ではEC比率が50%を超えた 。

 これは「リアルとデジタルの融合」が国ごとに異なる形で進んでいることを示す。

④ 会員ビジネスの深化

 Walmart+、Sam’s Club双方で会員収入が堅調に伸びている。会員こそが“ロイヤルティの源泉”であり、Walmartはこれを超長期戦略の核に据えている。

⑤ PhonePe・インド市場の可能性

 今回の営業利益減少はPhonePeの株式報酬の影響だが、その裏側にあるのは巨大市場インドへの深いコミットである。

単なるECではなく、決済・銀行・保険など、生活全体を包み込むエコシステムの構築に踏み込む姿が見える。

今後の注力領域・リスク(800〜1000字)

 Walmartの次の焦点はどこにあるのか。FY26 Q3の資料から読み取れるポイントは以下の通りだ。

● 注力領域

  1. 店舗起点の即時配送・在庫最適化

    店舗を“物流の中継基地”にする戦略は今後も拡大するだろう。

  2. 広告 × データビジネス

    売上よりも利益率に強いインパクトを持つ領域のため、Walmartが長期の柱に据えていると見える。

  3. 国際事業(特にインド・中国)の基盤強化

    Flipkart、PhonePe、Sam’s Club Chinaが三位一体で成長している。

  4. Membership収益の拡大

    “買い物の習慣化”を生み、安定収益源となる。

● リスク

  1. 商品ミックス効果(粗利率の変動)

    食品比率が高まると粗利が低下しやすい。

  2. 国際事業のボラティリティ

    為替変動、イベント時期(BBDなど)による営業利益の振れ幅が大きい 。

  3. 労務コスト・保険コストの上昇

    今期もクレーム費用が増加し、費用構造に影響を及ぼした。

  4. 新規テック投資の回収期間

    AI・自動化・店舗刷新への投資が短期では利益を押し下げる可能性がある。

 いずれも明確なリスクだが、裏を返せば“構造変化を加速させるための投資負担”でもあり、戦略的に意図されたものと言える。

まとめ

 WalmartのFY26 Q3を読み終えて強く感じるのは、Walmartが“巨大小売企業”という枠から抜け出しつつあるということだ。小売は、ただ商品を売るだけのビジネスではなくなった。

 物流、決済、広告、データ、会員基盤──あらゆる接点を束ねた“生活のOS”としての役割を担い始めている。今回の決算資料には、そのOSのアップデートが随所に現れている。

  • 店舗が物流になる

  • 会員が顧客価値を決める

  • 広告が小売の利益構造を変える

  • インド・中国が未来の成長曲線を描く

 そして何より、CEO自身が“未来に強いワクワクを抱いている”と語るほど、内部の熱量が高まっている。Walmartの強さは、規模よりも“変化を恐れない文化”にある。その文化が今、テクノロジーと融合し、世界最大の小売企業を再定義しつつある。

 FY26 Q3は、その変化が「数字」と「思想」の両面で形になった四半期だったと言えるだろう。

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