Netflix決算 Q3’25|売上17%増で堅調、ブラジル税で一時減速も広告とAIが次の成長軸にNetflix 決算」「Q3
世界のエンタメの“主役”、四半期ごとに見えてくる地殻変動
ストリーミングの王者・Netflixが、2025年7〜9月期(Q3’25)の決算を発表しました。
売上は115億ドル(約1兆7,800億円)と前年同期比+17%の力強い伸び。
視聴シェアもアメリカ、イギリスで過去最高を記録し、好調をキープしました。
ただし、ブラジルの税務問題で約6億ドル(約930億円)の一時的な費用を計上。
この影響で営業利益率は想定よりやや低い28.2%となり、EPS(1株利益)は$5.87(約910円)。
それでも、同社は「業績への長期的な影響はない」と明言しています。
“減速”の裏にある安心感——一時費用を除けば想定超えの実力
Netflixの発表によると、ブラジルの税務当局との係争費用を除けば、営業利益率はガイダンスを上回るペースだったとのこと。
つまり、“一時的なつまずき”の裏で、本業はむしろ好調です。
営業利益は32億ドル(約5,000億円)、営業キャッシュフローは28億ドル(約4,300億円)。
フリーキャッシュフローも26億ドル(約4,100億円)と堅調で、
通期見通しは従来の「80〜85億ドル」から90億ドル(約1兆4,000億円)へ上方修正されました。
米英では“テレビ視聴シェア”過去最高 ライブの波もNetflixがさらう
アメリカとイギリスでは、Netflixのテレビ視聴シェアが過去最高を更新。
‘Wednesday’のシーズン2や、映画『KPop Demon Hunters』など話題作がヒットし、
ライブ配信でも「Canelo vs. Crawford」戦が4,000万人超の視聴を記録しました。
(いまや「Netflix=映画」だけでなく「Netflix=ライブ」へと変わりつつあります。)
日本でも人気の『ストレンジャー・シングス』最終章が控え、年末の話題はさらに加速しそうです。
広告が“倍増”、AIが“助演”——テック企業としてのNetflix
見逃せないのは、広告事業が前年の倍ペースで拡大している点。
わずか3年で収益基盤を築き、2025年の広告収入は前年比2倍を見込むと発表しました。
今後はAmazonやAJA(日本)と提携し、広告配信プラットフォームを統合していきます。
また、生成AIの活用も急速に進展。
・対話型のコンテンツ検索
・自動翻訳されたプロモ映像の生成
・撮影現場でのデジタル加工(デエイジング)
など、制作から視聴までAIが自然に入り込み始めています。
地域別にみると——日本を含むアジアも着実に成長中
Netflixは今やグローバル市場で“均衡した”成長を見せています。
- 北米(米・加):50.7億ドル(約7,850億円、+17%)
- 欧州・中東・アフリカ(EMEA):37億ドル(約5,700億円、+18%)
- 中南米(LATAM):13.7億ドル(約2,100億円、+10%)
- アジア太平洋(APAC):13.7億ドル(約2,100億円、+21%)
日本を含むアジア圏は依然として二桁成長を維持しており、
「韓国ドラマから日本アニメまで、地域発コンテンツが世界に届く」
そんな好循環が続いています。
株主への還元も堅調:1兆5,000億円超の自己株買い余力
フリーキャッシュフローが潤沢なNetflixは、株主還元にも積極的。
2025年7〜9月期には約19億ドル(約2,950億円)を投じて自己株買いを実施。
残りの買戻し枠は約101億ドル(約1兆5,600億円)と余力十分です。
借入残高は145億ドル(約2兆2,500億円)、現金同等物93億ドル(約1兆4,400億円)で、
財務体質にもゆとりがあります。
Q4’25見通し:年末も二桁成長、営業利益率23.9%を維持へ
次の四半期(2025年10〜12月期)は、売上119億ドル(約1兆8,500億円、+16.7%)を見込み、
営業利益率は23.9%。
通期では売上451億ドル(約7兆円)、営業利益率29%と、
依然として高い収益性を維持する姿勢です。
まとめ:Netflixの“次の物語”は、映像の中にも、広告の中にもある
数字の上下だけを見れば「一時減速」と言える今期。
けれど中身を見れば、税務費用を除けば実力はむしろ加速中。
ライブ、広告、AI、そして地域拡大。
Netflixは“動画配信企業”から、“総合エンタメ・プラットフォーム”へ進化しています。
注目したいのは、
「コンテンツだけでなく、視聴体験全体を再設計する力」が次の成長源になりつつあること。
視聴の時間を、広告も、AIも、より豊かに——
Netflixの次の一手は、私たちの“夜の過ごし方”をまた変えていきそうです。