NIKE、2026年度第1四半期決算──前期の落ち込みから一転、収益は小幅回復も利益率低下が続く
NIKE, Inc.は2025年9月30日、2026年度第1四半期(6月〜8月)の決算を発表した。直前の2025年度第4四半期(3月〜5月)は売上高が前年同期比12%減、純利益が86%減と大幅な落ち込みを見せたが 、今期は売上が前年同期比でわずかに増加に転じ、一定の回復を示した。ただし、利益率は依然として低下傾向にあり、構造的な課題が鮮明になっている。
Q4 FY25の苦境──大幅減収減益
2025年5月期第4四半期(2025年3〜5月)の売上高は110億9,700万ドルで前年同期比12%減。純利益は2億1,100万ドルと前年同期の15億ドルから86%減少し、EPSも0.14ドルに急落した 。
要因は以下の通り:
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NIKE Direct(直営・EC)が44億ドルと14%減。特にデジタル販売は26%減と深刻な落ち込み 。
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Wholesale(卸売)も64億ドルと9%減。
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粗利益率は40.3%(前年同期比▲4.4pt)。
全地域で売上が減少し、特に中国は21%減と厳しい結果に終わった 。
Q1 FY26の回復──売上は再び成長軌道へ
続く2026年度第1四半期(2025年6〜8月)は売上高117億ドルで前年同期比1%増に転じた 。地域別に見ると、北米(+4%)、EMEA(+6%)が牽引する一方、中国は依然として前年同期比▲9%と厳しさが残る 。
一方で、利益面では課題が続く。純利益は7億2,700万ドルと前年同期比▲31%、EPSは0.49ドル(前年0.70ドル)にとどまり、粗利益率も42.2%と前年から3.2pt低下した 。
チャネル別比較──Directは弱含み、Wholesaleが対照的に好調
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Q4 FY25:Direct ▲14%、Wholesale ▲9% 。
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Q1 FY26:Direct ▲5%、Wholesale +7% 。
直営チャネルが連続してマイナスを記録する一方、卸売は回復基調に転じている。特にQ1では卸売が成長を支え、全体の売上をプラスに押し上げた。
ブランド別──Converseの苦戦継続
Q4 FY25ではConverseが3億5,700万ドルと▲26%減少 。Q1 FY26も3億6,600万ドルと前年同期比▲27%で、依然として低迷している 。ブランド再構築が急務となっている。
財務基盤と株主還元
Q4 FY25終了時点(2025年5月末)の現金・短期投資は92億ドルだったが 、Q1 FY26末には86億ドルまで減少 。これは配当や自社株買いに充てられた結果でもある。なお、配当は6%増を継続し、23年連続の増配を実現している。
総括──「最悪期は脱した」が課題山積
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Q4 FY25:減収減益の底(売上▲12%、純利益▲86%)。
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Q1 FY26:売上は回復基調(+1%)だが、利益は依然として減少(▲31%)。
CEOのエリオット・ヒル氏は「重点領域で進展を見せた」と述べる一方で、中国市場やDirect事業の回復には時間がかかるとの見方が強い 。
この比較から、ナイキはFY25第4四半期で「底」を打ち、FY26第1四半期で売上は回復に転じたものの、利益体質の改善は依然として道半ばであることが浮かび上がる。