Netflixが切り拓く新時代の野球体験──2026年WBC、日本で独占ライブ配信へ
Netflixが2025年8月26日に発表したニュースは、日本の野球ファンにとって大きな転換点となるものでした。2026年に開催される第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を、日本国内で独占的にライブ配信するパートナーシップをWBCIと締結したのです。野球の“国際舞台”をNetflixが届けることの意味は、単なる放送権の獲得にとどまりません。視聴の仕組みが変わることで、コンテンツとしての野球がどのように広がり、新しい価値を持つのでしょうか。
世界の舞台を「家庭のスクリーン」に持ち帰る力
これまでWBCのような国際大会は、地上波や専門チャンネルといった限られた選択肢を通じて視聴されるのが一般的でした。しかし今回、Netflixが日本での独占配信権を獲得したことで、全47試合がスマートテレビやモバイル端末、PCといったあらゆるデバイスで楽しめるようになるということです 。
そもそもNetflixはすでにWWEやNFLといったスポーツエンターテインメントのライブ配信で実績を重ねています。
そのノウハウがWBCという“伝統と熱狂が交わる舞台”に持ち込まれることは、単なる放送の拡大以上の意味を持ちます。視聴の柔軟性はもちろん、ファンが試合の「熱」をリアルタイムで共有し、SNSを介して共鳴し合う新しいコミュニティ形成の可能性も広がります。これはNetflixがエンタメのプラットフォームから「スポーツ文化を媒介する場」へ進化していることの象徴でもあります。
野球が「世代」と「境界」を超える契機に
MLB副コミッショナーのノア・ガーデン氏は、「Netflixと組むことで野球の伝統を大切にしながらも未来を見据え、あらゆる世代のライフスタイルに合わせた大会体験を実現できる」と語っています 。この言葉は、今回の提携の本質を表しています。
従来、野球は“球場に足を運ぶ”ファンや、“放送の前に座る”視聴者に強く依存してきました。
ところがNetflixを通じた配信では、野球に馴染みの薄い若い世代や、生活のリズムが多様化した社会人層、さらには国境を越えた視聴者までもが同じ舞台を共有できます。日本代表が王者防衛を懸けて挑む試合は、世代や地域の差を超えて「共通体験」として浸透するはずです。
この“境界を越える力”こそが、Netflixというプラットフォームの強みです。ドキュメンタリー作品『The Turnaround』『The Comeback』などで野球の物語性を深く描いてきたNetflixが、今度はリアルタイムの熱狂を届ける──物語と瞬間の両面から野球文化を拡張する試みと言えます。
「届け方」が変われば、スポーツの意味も変わる
2026年WBCは、プエルトリコ、米国、そして東京を含む4都市で開催されます 。大谷翔平選手がマイク・トラウト選手を打ち取って優勝を決めた2023年大会の記憶が新しい中、日本代表は再び世界の頂点を目指します。その瞬間を、日本国内のファンがNetflixを通じて同時に体験することの意味は大きいでしょう。
従来のスポーツ中継は「現場にいる人」と「テレビで見る人」という二分構造に分かれていました。しかしNetflixの登場で、その境界が揺らぎます。自宅のソファに座っていても、スマホ片手に外出先でも、“同じ瞬間”を分かち合える。視聴者一人ひとりが「共犯者」として物語に参加できる環境が整うのです。
これは単なる技術的な進歩ではなく、スポーツの意味を更新する営みです。野球というコンテンツが“見るもの”から“共鳴するもの”へと進化し、文化としての厚みを増していく。NetflixとWBCの提携は、その未来を指し示す象徴的な一歩となるでしょう。
マスメディアから“マイメディア”へ──時代の転換点に立つスポーツ中継
これまでスポーツの大舞台は、地上波やケーブルといった「マスメディア」による独占中継によって支えられてきました。いわば“一家に一台のテレビ”を前提にした発想です。しかし、いまやその構造は明らかに変わりつつあります。スマートフォンを“一人一台”持つ時代になり、生活者のライフスタイルや視聴習慣がきめ細かく分散しているからです。
今回のNetflixとWBCの提携は、この変化を象徴しています。既存の放送枠を確保するよりも、誰もがどこでもアクセスできる配信を選ぶ方が、結果としてより広いリーチを獲得できる──主催者側の判断はそこにあります。しかも配信であれば、試合のリアルタイム視聴だけでなく、オンデマンドでの振り返り、SNSでの共有、短尺クリップの拡散といった二次的な広がりが無限に生まれる。これらは従来のテレビ中継では実現できなかった価値です。
つまり、スポーツ中継は「マスに届ける」ものから「多様な個を束ねて共鳴させる」ものへと転換しつつあるのです。放送の独占権はもはや特権ではなく、むしろ配信の開放性こそが最大の武器になる。2026年WBCのNetflix独占配信は、スポーツの届け方が根本から変わることを示す象徴的な出来事であり、まさに時代の節目に立ち会っているのだと感じます。
今日はこの辺で。