ウォルマートFY26年第2四半期決算──売上高は4.8%増、eコマース25%成長でデジタル加速
2025年8月21日、ウォルマートは2026会計年度第2四半期(5月1日〜7月31日)の決算を発表した。売上は堅調に伸び、特にeコマースが前年同期比25%増と大幅に拡大。米国市場では食料品やヘルス&ウェルネスが好調で、グローバルでも広告事業が46%成長するなど、非コア領域の収益源も強化されている。一方で、法務関連コストや再編費用により営業利益は減少。ガイダンスは売上・EPSともに上方修正されたが、課題も残る。定点的に四半期ごとに見ることで、ウォルマートの成長軌道と投資負担のバランスが浮かび上がる。
第2四半期の全体像:売上高は1,774億ドルに
第2四半期の売上高は1,774億ドルで、前年同期の1,693億ドルから+4.8%の増収。為替の影響を除いた実質ベース(constant currency)では+5.6%の伸びとなった 。
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米国事業:1,209億ドル(+4.8%)
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国際事業:312億ドル(+5.5%、為替除き+10.5%)
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サムズクラブ:236億ドル(+3.4%)
為替影響が1.5Bドルのマイナス要因となったが、それを上回る実需成長が確認された 。
営業利益:特殊要因で減益も、調整後は横ばい
営業利益は72.9億ドルで前年同期比▲8.2%の減少 。減益要因は以下の通り。
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法務関連費用:約4.4億ドル
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サプライチェーン再編コスト:約1.5億ドル(主にサムズクラブ)
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自己保険型の一般損害賠償請求費用の増加(約560bpsの悪影響)
一方、調整後営業利益(constant currencyベース)は+0.4%増の80億ドルと、コア事業の収益力は維持された 。
純利益・EPS:GAAPは大幅増、調整後は横ばい
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GAAP EPS:0.88ドル(前年0.56ドル、+57.1%)
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調整後EPS:0.68ドル(前年0.67ドル、+1.5%)
GAAPベースで大幅増益となったのは、保有株式(特にSymbotic)の評価益(0.26ドル寄与)が大きいため。コア収益を示す調整後EPSは横ばいに近く、成長は抑制的だった。
セグメント別動向
米国事業(Walmart U.S.)
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売上:1,209億ドル(+4.8%)
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既存店売上高(除く燃料):+4.6%
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eコマース売上:+26%(店舗配送が+50%)
米国のEC成長をけん引したのは、店舗からの即時配送(store-fulfilled delivery)。注文の約3分の1は「3時間以内」に届けられ、スピード感が顧客に強く支持された 。さらに、広告事業(Walmart Connect)が+31%増、マーケットプレイスの拡大も相まって、リアル店舗×デジタル×広告が三位一体で収益を押し上げた。
国際事業(Walmart International)
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売上:312億ドル(+5.5%、為替除き+10.5%)
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eコマース:+22%
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主な牽引国:中国、メキシコ(Walmex)、インド(Flipkart)
ピックアップ&デリバリーやマーケットプレイスが浸透し、デジタル比率が上昇。Flipkartの広告事業も+15%と成長し、地域ごとのデジタルエコシステム拡大が確認された。
サムズクラブ(Sam’s Club U.S.)
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売上:236億ドル(+3.4%、燃料除き+6.0%)
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既存店売上(除く燃料):+5.9%
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eコマース:+26%
会員数・更新率は堅調に増加。しかしサプライチェーン再編コスト(0.8億ドル)と賠償費用増で、営業利益は▲15.8%減の4.9億ドルに留まった 。
キャッシュフローと資本政策
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営業キャッシュフロー:184億ドル(前年同期比+20億ドル)
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フリーキャッシュフロー:69億ドル(前年同期比+11億ドル)
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自社株買い:17百万株、総額16億ドル(残り59億ドルの枠あり)
強い営業キャッシュ創出力を背景に、株主還元は安定。
ガイダンス:FY26通期で売上・EPSを上方修正
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Q3見通し:売上+3.75〜4.75%、営業利益+3.0〜6.0%、EPS 0.58〜0.60ドル
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FY26通期見通し:売上+3.75〜4.75%(従来3.0〜4.0%)、EPS 2.52〜2.62ドルに上方修正 。
営業利益成長率の見通し(+3.5〜5.5%)は据え置き。
総括
今回のFY26 Q2決算は、売上とeコマースが堅調に伸びる一方で、法務コストや保険請求費用が利益を圧迫した四半期だった。調整後EPSは横ばいで、成長力の一服感もにじむ。ただし、キャッシュフローは強く、株主還元余力も健在。通期ガイダンスを売上・EPSともに引き上げている点はポジティブだ。
特に注目すべきは、「リアル店舗網を核にした即時配送」を軸に、広告やマーケットプレイスと絡めながらEコマースを伸ばしている点。これはAmazonのように倉庫と専用物流に依存するモデルとは異なり、店舗網そのものを“最後の1マイル”の強みとして活かせるのがウォルマートの特長だ。
つまり、「リアル資産を持つ小売」だからこそ実現できる即時性と地域密着性が、同社のEC成長を下支えしている。これこそが、今後の持続的成長の源泉になり得るだろう。