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“集客も接客も、すべては顧客のために”──繁盛店を生むLINE活用術と経営哲学

六本木で開催されたイベント「Hello Friends! W!th LINEヤフー」で、熱気を帯びたトークセッションがあった。登壇したのは、「鰻の成瀬」で300店舗を展開した山本昌弘氏と、SNS戦略で注目を集める「出汁林」の林龍男氏。異なる手法で成功を収めた二人が語るのは、LINEやInstagramといった身近なツールを“本気で使い倒す”姿勢。そこには「売上」だけでは語れない、“顧客との関係性”を見据えた新しい飲食店経営のあり方があった。

1章:繁盛店に必要なのは「ツール」ではなく「哲学」

地方食材で勝負する異色の飲食経営者たち

 鰻専門店として急成長する「鰻の成瀬」、そして地元群馬食材を活かす定食屋「出汁林」。両者に共通するのは、未経験からの挑戦と現場主義だ。山本氏は「最初はITもSNSも苦手だった」と語りながらも、LINEの活用で集客力を底上げし、フランチャイズの仕組みと丁寧な現場運営で全国へ店舗網を拡大。

 一方、林氏は「飲食に関して素人だからこそ、数字と声に耳を澄ませた」と話す。YouTubeやInstagramでの発信もすべて「現場と向き合うための手段」として設計されている。

現場の声が、成長の鍵

 「出汁林」では、LINEアンケートの結果を週次で検証し、全社で改善策を実行するという。林氏は「現場が売上を追いかけるのではなく、顧客体験を突き詰めることが大事」と語る。逆説的だが、売上を伸ばすには「売上を見ない」姿勢が求められている。

2章:LINEがつなぐ“個”と“再来店”

「顧客の記憶」に残る仕組み

 LINE公式アカウントで友だち登録を促すPOPやショップカードはあくまで入口。その先にあるのは、「また来たくなる」体験だ。たとえば「雨の日限定クーポン」「お祝いごとの提案」など、文脈に寄り添ったメッセージが、来店のきっかけをつくる。

3章:新規はSNS、リピートはLINE──集客の方程式

インスタで“今”を伝え、LINEで“関係”を育てる

 林氏が語るように、「Instagramは今一番新規が取れる場所」。ただし「満席でないなら、すべての手を打つべき」として、Instagram・LINE・YouTubeをハイブリッドに運用する。

 一方で山本氏は「中高年向け業態ではオールドメディアも効く」とし、紙媒体やテレビも活用。店舗特性とターゲット層に応じてメディアを選び、「まずは知ってもらう」ことに集中している。

ツールに溺れず、「届け方」を設計する

 どんな媒体を使うかよりも、「どうやって届けるか」が鍵だと二人は口を揃える。林氏は、LINEでの配信内容に「興味のない情報はブロックされる」と冷静な分析を重ね、トッピングのリピート率からクーポン設計まで細かく調整していた。

4章:データを“おもてなし”に変える現場力

顧客の行動が、経営のヒントになる

 「揚げ物を頼む人はドリンクも頼みやすい」──そんな細かな傾向も、蓄積された注文データから見えてくる。林氏はスタッフと月12回もUXミーティングを開き、メニュー表の順番や写真サイズまで検討するという。「見せ方」で売上が変わることを、データで証明しているのだ。

顧客単価は、“満足の副産物”

 再来店の頻度やトッピング率を高めるには、まず満足度が必要。売上を伸ばす施策の多くは、「また来たい」と思わせる接客の裏付けとして機能していた。単なる数字ではなく、信頼の蓄積が客単価を押し上げる。

5章:フランチャイズもDXも「人」が主語になる時代へ

横のつながりが、強い本部をつくる

 「鰻の成瀬」では、加盟店同士の情報共有も活発だ。山本氏は「本部がコントロールしすぎると不満が溜まる」と語り、あえて自由なやりとりを促しているという。

 現場が自走する組織文化は、LINEの導入を本質的に支える土壌になっていた。

海外展開は「ドルで稼ぐ」ための現実的な挑戦

 「成瀬」の海外進出は、夢というより“仕入れ価格の安定化”という現実的な背景がある。「FC加盟店に無理をさせたくない」という想いが、海外展開の動機になっていた。

 一方で林氏は「現場と本部の役割を分けることが大事」と語る。本部はデータで空中戦を、現場は顧客満足で地上戦を──その両輪が、ブランドを強くしていく。

どんな時代も、繁盛の根っこにあるのは「人と人との関係」だ。LINEやSNS、データといったツールは、あくまでそれを育てるための“手段”にすぎない。

本質は常に、「目の前のお客様をもっと笑顔にできるか」。

技術の時代にこそ問われる、“人間的な経営”の形が、ここにあった。

 

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