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回復から成長へ──2025年Q2決算に見るディズニーの本格反攻

2024年の逆風を乗り越え、ディズニーがいよいよ“攻め”に転じた──。2025年1〜3月期(FY25 Q2)決算で明らかになったのは、収益性の改善と事業別戦略の進化である。ストリーミング、テーマパーク、映画と、柱となる事業それぞれが確実に地歩を固めつつある今、ウォルト・ディズニー・カンパニーは「未来」への布石を着実に打ち始めている。

①:全体業績──売上・利益ともに2桁成長の好決算

 

2025年1〜3月期、ディズニーは売上高236億ドル(前年比+7%)、税引前利益30.9億ドル(同+2.4倍)を記録した 。

中でも注目すべきは、調整後1株利益(Adjusted EPS)が前年同期比+20%の1.45ドルとなった点。これは市場予想を上回る好成績であり、主に「エンタメ部門」「テーマパーク事業」からの利益貢献が大きかったとされる。

さらに、フリーキャッシュフローも前年同期比で2倍超の48.9億ドルと大きく増加。前年は構造改革の影響で営業利益が抑制されていたが、今期はその反動もあり利益体質へと転換している。

②:ストリーミング──Disney+が黒字化軌道へ

ストリーミング部門では、Disney+とHuluを合わせたDTC(Direct to Consumer)部門が3.36億ドルの営業利益を記録 。前年同期比で+2.89億ドルの大幅改善で、赤字体質だった同部門がいよいよ黒字化フェーズに突入した。

また、Disney+単体の有料会員数は1億2600万人(前期比+140万人)、**ARPU(1人あたりの月額平均収入)は7.77ドル(+3%)**と着実に成長。価格改定と加入者層の変化が収益改善に寄与している。

ただし、HuluのSVOD単体サービスはARPUがやや減少(12.36ドル→12.52ドル)し、広告収益の減退が影響したと見られる。


黒字化分析✅ 1.

価格改定による収益性の強化

ディズニーは2024年から2025年にかけて、Disney+およびHuluの価格を段階的に引き上げました。これにより、1人あたりの月間平均収益(ARPU)が増加しています。

たとえば:

  • Disney+のグローバルARPUは7.55ドル → 7.77ドル(+3%)

  • 国内(米・加)では7.99ドル → 8.06ドル

値上げだけでなく、「広告付きプラン」導入によって安価なプランも残しつつ、収益性の高い層を確保したのがポイントです。

黒字化分析✅ 2. Star Indiaを外して収益構造を健全化

2024年11月、Star India事業をリライアンス(RIL)との合弁会社に移行したことで、高コスト体質だったインド市場の収支がDTCの連結から除外されました

これにより、赤字だった「Disney+ Hotstar」などの数字が外れ、北米・欧州中心の“収益性の高いエリア”だけが残ったかたちになります。

黒字化分析✅ 3.

コスト最適化(制作・技術・人件費)

過去1〜2年で進められてきた大規模なコンテンツ制作費・テック投資の見直しも、今期の黒字化に貢献しています。

具体的には:

  • マーケティング費の削減

  • 番組数の絞り込み(“量より質”への転換)

  • テクノロジーコストの圧縮

これにより、売上が伸びなくても損益分岐点が下がり、黒字を確保しやすくなったのです。

つまり、

価格戦略の見直し、不採算事業の切り離し、運営コストの適正化という“三拍子”が揃ったことで、DTC部門は赤字体質から脱却し、黒字フェーズに突入したのです。


③:エンターテインメント──映画とライセンス販売で利益大幅増

エンタメ部門の売上は前年同期比+9%の106.8億ドル、営業利益は同+61%の12.6億ドルに跳ね上がった

その内訳を見ると、劇場公開後のライセンス販売(コンテンツセールス&ライセンシング)が前年同期比+54%。これは『モアナ2』のヒットやテレビ向けエピソード販売が好調だったことによる。

また、映画『ムファサ:ライオン・キング』の好調もあり、ディズニーIPの強さが再確認された。さらに、『ブルーイ』『グレイズ・アナトミー』など既存TVコンテンツの再評価も進んでいる。

④:スポーツ──ESPNの広告収益は伸びるも利益は減

スポーツ部門(主にESPN)では売上が45.3億ドル(前年同期比+5%)と堅調ながら、営業利益は6.87億ドルで前年比▲12%減と苦戦 。

原因は、カレッジフットボール・プレイオフ(CFP)やNFLの追加放送による番組制作コストの増加。また、Venu事業からの撤退に伴う一時的な減損も利益を圧迫した。

一方で国内広告収入は+29%の伸びを示しており、番組の編成次第で利益体質の回復も視野に入る。

⑤:パーク&エクスペリエンス──米国内の伸びが牽引

テーマパークなどを含む「エクスペリエンス部門」では、売上が88.9億ドル(前年比+6%)、営業利益は24.9億ドル(同+9%)と堅実な伸び 。

特に米国内のパーク収益は13%増の18.2億ドルと好調。これは、クルーズの乗客数やホテル宿泊数が増加したことに加え、客単価の上昇によるものだ。

一方、上海・香港ディズニーの国際部門は入園者数の減少により減益。海外の不安定さが際立ったが、総じて部門全体では収益を底上げする結果となっている。

締めくくりに

Q2単体ではすでに利益率回復とコンテンツ力の再評価が進んでいる今、ディズニーの今後にとってカギとなるのは「持続的成長への道筋」だ。2025年下半期にはESPNのDTCサービス正式ローンチディズニーランド70周年投資の本格化が予定されており、これらがどう業績に影響するかが注目される。

次回の決算でも、その歩みを追っていこう。

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