「GUNDAM NEXT FUTURE -FINAL-」から学ぶIP戦略|大阪万博への展開とガンプラ45周年の未来
ガンダムシリーズは40年以上にわたり、ロボットアニメの枠を超え、世界中のファンを魅了し続けてきた。バンダイナムコグループは、ガンダムを単なる作品にとどめず、IP(知的財産)として多角的に育成し、新たな価値を生み出している。その集大成とも言えるのが、2025年の大阪・関西万博に出展する「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」だ。このパビリオンでは、ガンダムが描いてきた宇宙技術の未来を体験型コンテンツとして展示し、新たなファン層を取り込むことを目指している。
そして、2025年の万博を前に、そのパビリオンの最新情報を披露する場として開催されたのが、「GUNDAM NEXT FUTURE -FINAL-」 だ。本イベントのオープニングセレモニーでは、パビリオンで展開される新作アニメーションの詳細や、ガンプラ45周年の新施策が発表された。
IPに関わるメーカーにとって、ガンダムの取り組みはひとつの指標だ。このイベントを通じて、バンダイナムコグループがどのようにIPを育成し、新たな展開を生み出しているのかを探ってみよう。
【序章】ガンダムの歴史に唸る
率直に言って、ガンダムの歴史と、そこから派生したガンダムのプラモデルの深さに触れて、驚いた。これは、ガンダムのプラモデルの歴史を示したものだ。
45年もの間、愛され続けるのは並ではない。下記の写真は、歴史を感じさせる一番最初のプラモデル。ここから始まったのかと思うと感慨深い。誰がこの時、こんなに長く愛されるコンテンツになると思っていただろう。
ガンダムのアニメーションは、プラモデルという親和性の高いおもちゃの出現により、バンダイを支えるコンテンツになったわけである。
そして、遊んだ“子供”たちは今や大人になって、今でも魅了して、その最新作の映画は当然にして今まさに公開されている。「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」である。そこまで来ると、立派な世界に誇れる日本のコンテンツ。おもちゃも連動しているからこそ、バンダイナムコにとっても、育てる姿勢を感じさせるものだった。そういう視点で見ていくことが大事だと思った。
【1章】大阪・関西万博に向けたパビリオンのビジョン
「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」──未来の宇宙世紀を体験する
さて、今回のイベントで最も注目を集めたのが、2025年の大阪・関西万博に出展される「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」 の最新情報だ。このパビリオンでは、ガンダムが描いてきた未来の宇宙技術をテーマに、新作アニメーション「GUNDAM: Next Universal Century」を公開する。
物語の舞台は西暦2150年の宇宙。来場者は、軌道エレベーターを使って静止軌道上の宇宙ステーション「スタージャブロー」へと向かい、そこにあるモビルスーツの活躍を目撃することになる。単なる映像鑑賞ではなく、没入型の体験ができるように設計されており、まるで宇宙旅行をしているかのようなリアルな感覚 を味わえる。
【2章】没入感を高めるためのキャストとスタッフ陣
実写キャストの起用でリアルな世界観を演出
この日は、このアニメーションの監督を務めた辻本貴則氏(写真左)も登壇。彼の指揮のもと、映像には、濱田岳、土屋太鳳、武田真治、斎藤工 など、実写映画で活躍する俳優陣が声の出演をしている。辻本氏は、「まるでライドアトラクションのような没入感を楽しんでほしい」と語る。
また、メカニカルデザインにはガンダムシリーズを支えてきた大河原邦男氏やカトキハジメ氏が参画。音楽は「鎌倉殿の13人」や「葬送のフリーレン」を手がけたEvan Call氏が担当し、壮大な世界観を演出する。
大阪・関西万博への意気込み
バンダイナムコフィルムワークスのプロデューサー森下健太郎氏(写真右)も次のように語った。
「宇宙世紀の未来を、万博という場で多くの方に体験していただきたい。単なる展示ではなく、未来へのインスピレーションを与える空間にしたい」
これは、ガンダムというIPが「作品」から「リアルな体験」へと進化し続けていることを示している。今に生きているのだ。
【3章】ガンプラ45周年と未来の展開
ガンプラの累計出荷8億個突破、次の目標は10億個
さて、続いて、「ガンプラ」についてである。なんとそれは2025年で45周年を迎え、これまでに累計8億個を出荷したという。歴史の中で、技術は進化し続けている。
この中でまだ、サンプル段階でお披露目こそなかったが、下記の発表も。
技術革新とサステナビリティの融合
そして、最新技術を取り入れたガンプラで、担当者たちが胸を張る。「パーフェクトグレード ニューガンダム」はご覧の通り、最高峰の技術を結集した精密な造形が印象的だ。
また、商品も時代を踏まえた対応をしていることも忘れてはならない。それはサステナブルへの配慮。 「ケミカルリサイクル ガンプラ」は環境に配慮した新素材を採用
これらの発表は、ガンプラが「作る楽しさ」だけでなく、「未来のものづくり」にも貢献していることを示している。
とはいえ、プラモデル自体の敷居の高さもある。だから、新しくこの世界を感じてもらうべく、イベントでは、新たなプロモーション施策が発表された。
俳優の出口夏希氏と横田真悠氏 がアンバサダーに就任し、ガンプラの初心者でも楽しめることを伝えるCMが放映された。また、このCMの設定を現実化した「ガンプラ部」が発足し、ファン同士が交流できる場を提供する。
ガンダムというコンテンツを映像作品、商品作り、プロモーションとあの手この手で、引き込もうとしている企業努力を感じる次第だ。
【4章】IPのグローバル展開──世界へ拡がるガンダム
世界20カ国以上で展開する「GUNDAM BASE POP-UP TOUR」
ガンダムIPは日本国内にとどまらず、世界市場へと拡大している。その象徴となるのが、「GUNDAM BASE POP-UP TOUR」だ。大阪の大丸梅田店でのポップアップストア を皮切りに、札幌、名古屋、さらには海外20カ国以上で展開 される。
各地域のニーズに合わせた展開を行うことで、ガンダムIPのグローバル化が進んでいる。これもまた、長くこのコンテンツを育てていく上では大事な戦略の一つであろう。
【5章】IPを彩る音楽──LINKL PLANETが届ける「胸にいつもガンプラを」
そして、あらゆる価値観を取り込む。イベントの最後には、LINKL PLANET による特別なパフォーマンスが行われた。彼女たちは、プラモデルの魅力を広める活動を続ける9人組のユニット。
そして、彼女たちが歌うのは、ガンプラ45周年を記念したニューシングル「胸にいつもガンプラを」。このイベント内でも初披露され、ガンプラへのストレートな愛が詰まった楽曲に、会場のファンも熱い視線を送っていた。この曲は、3月19日にリリース予定で、ガンプラ付きの限定版も予約受付中だという。
IPの発展には、作品だけでなく音楽や文化的な側面も重要な要素となる。LINKL PLANETのようなアーティストが関わることで、より多くのファンにIPの魅力が伝わることを、今回のイベントは改めて示した。
【終章】IPの未来は「体験」と「進化」
「GUNDAM NEXT FUTURE -FINAL-」は、2025年の大阪・関西万博へ向けたパビリオンの情報を披露する場であり、現在進行形で進化するガンダムのありようを映し出す。まとめると、、、
• 未来の宇宙技術を体験できる新作アニメーション
• IPを成長させるための新たなファン層開拓
• 技術革新とサステナブルな商品開発
• 世界市場を視野に入れたグローバル展開
これらの取り組みは、他のIPビジネスにも応用可能なヒントを提供する。IPは「作るだけ」ではなく、「育て、広げていくこと」が重要なのだ。バンダイナムコグループが示したIP戦略は、今後のエンターテインメントビジネスにとって大きな示唆を与えるだろう。
今日はこの辺で。
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