1. HOME
  2. event
  3. ランキング
  4. ヒット商品から見る2025年の消費トレンド――社会背景とともに変わる消費者の心

ヒット商品から見る2025年の消費トレンド――社会背景とともに変わる消費者の心

最近のヒット商品を見ていると、その時代ならではの共通性があるというのが実に面白い。本記事では、ファッションweekでの日経トレンディ編集長・澤原昇氏の講演内容をもとに、最新のヒット商品とその背景に迫り、消費者の心を掴むためのポイントを考察します。商品個別の事例とともに、今の時代を象徴するトレンドを網羅しました。

Z世代のSNS拡散力と世代を超えた商品設計

 僕が気になったキーワードはありきありではあるけど、「Z世代」。別にバズワードに乗るというわけではない。けれど、ヒットの構造とZ世代の関係性に面白さがあります。例えば、「飲むわらび餅」はSNSで話題となり、若者層を中心に人気が爆発しました。その結果、親世代が「普通のわらび餅」を購入するという二次的な消費が生まれ、世代を超えたヒット商品となっています。

 要するに、Z世代の人の数は多くはないのに、SNS利用が巧みだから、脚光を浴びるというわけです。だから、数は少ないので、Z世代に向けた商品は案外、ランキングの上位にはきません。今のわらび餅のように、他の世代を巻き込んだ商品が売れていくのです。

また、「クロスブレンドカレー」は、大人と子どもが同じルーで楽しめる点が評価されました。家庭内のニーズを細かく捉えたこの商品は、子どもの舌の「大人化」や、親の手間を軽減するニーズに応えています。

再ブレイクの仕掛け人もZ世代

 そのほかで言えば、アサイードリンクが、今再ブレイクしています。

 元を辿れば、今から10年前にブレイクしており、少なからず、その親世代や兄弟には馴染みがあるわけです。だから、そのヒットの素地はあるわけです。ただ、ここで大事なのは、同じ切り口で売れているわけではないということ。当時と媒体や環境も異なるから、そこは変わっていくわけです。

 10年前はあくまでスーパーフードとしての意味合いでブレイクしていました。ですが、今は、「映え」の部分なんです。

 つまり、SNSでそれを作って、「映え」として提案しつつも、その中身の部分は理解があるから、それら以外の世代の共感も集めて、再ブレイクするという構造です。

体験が伴うとよりヒット度合いが増す

 この話にはまた、別のヒントもあって、それは自ら「それを作って」という部分です。

 要するに、そこに体験的な要素があると、より一層、拡散の度合いを増すことになります。まずZ世代がSNSで目に触れる時に、自分でもやってみたいという衝動に駆られ、実際に行動して、それを自ら拡散する動きが生まれているからです。

 だから、既存の商品にもそういう体験や体験してみたいと思える意外性が大事になってくるわけです。だから、トイレ洗浄で、トイレマジックリンの泡パックが売れるのです。泡であることで、やってみたい心理をそそり、それ自体がトイレ掃除を少しでも楽しくさせる意味で、売れるわけです。

 何気ないランドセルも意外性で、布製のものが出始めました。でも、それは実態に合っていて、今、学校では紙の資料とタブレットとが共存しているわけです。そうすると、ランドセルの中身が異常に重くなってしまいます。だから、布製。

「得する消費」が生む新たな価値観

 そして、2024年のヒット商品ランキングで目立ったのは、消費者が「得をする」と感じる商品の台頭です。

 例えば、「Vポイント」のような汎用性の高いポイントサービスや、格安プレミアム商品と呼ばれる付加価値を加えた廉価商品が挙げられます。ポイントに関しては多くが、通信キャリアと紐づいています。その点、Vポイントは主に、三井住友銀行というインフラなんです。はなから通信とは関係ないところで、独自路線を歩めて、サブポイントとして活用されて脚光を浴びます。

 お得に関しても多様化が進んでいることを示しています。

 また、同時に「アセドロン」のような機能性下着もその一例です。汗を吸収しやすく乾きやすい。一見すると、お得さはないように思えますが、違います。みなさん、ダウンジャケットなどをこの時期、着たりしませんか。それで電車に乗ってしまうと、汗だくなんてことありますよね。つまり、この商品は、夏の暑さ対策だけでなく、冬場の通勤時にも役立つ通年型商品として高い評価を得ました。

「時短×楽しさ」で変わる家事と日常の景色

 家事の効率化商品は、新たな局面を迎えています。「トイレマジックリン スプレー泡パック」は、その一例です。時短商品でありながら、スプレー後に泡立つ様子が「エンタメ性」を持ち、家事を楽しむ要素が加わりました。これにより、男性も掃除に参加する機会が増えたという副次的効果も見られます。

 さらに、「スティック型冷凍食品」は、冷凍庫のスペースを有効活用し、家庭内の冷凍庫不足という問題を解消しました。この商品は収納性と機能性を兼ね備えた一石二鳥の例です。

新しい体験を提供する商品たち――「物×体験」の時代へ

 先ほど触れた通り、体験を重視する消費は、進化を遂げています。「ゴリラの一掴み」というふくらはぎ専用マッサージ器具は、強力なマッサージ効果とユニークな名前で話題を呼びました。パッケージも雑貨感覚で手に取れるデザインとなっており、従来の家電の枠を超えた商品として注目されています。そして、忘れてはならないのは、それ自体が片方の足しかないと言うこと。

 普段、こういうものは両足であるのが常識。でも、価格面でのお手軽さと体験価値を加味して、売れていくわけです。

 また、食品分野では「もちっとスパゲッティ」がヒットしました。アルデンテが一般的とされる中、日本人の「もちっとした食感」への嗜好を捉えたこの商品は、消費者の潜在的なニーズを掘り起こしました。

2025年の注目ポイント―モビリティとウェアラブルの進化

 2025年には、モビリティ分野の変化も見逃せません。電動キックボードや電動バイクは、新たな法律の整備とともに普及が進むと予想されています。また、これらは単なる移動手段としてだけではなく、「駐輪場を使える自転車モード」などの利便性を追加することで、社会のニーズに応えています。

ウェアラブルデバイスも進化を遂げており、「眼鏡型AIデバイス」は、スマートフォンを凌ぐ便利さを提供する可能性があります。たとえば、無意識に通り過ぎた情報を記憶・活用し、日常の体験を新しい形に変える力を持っています。

 澤原氏が語るように、ヒット商品の背景には、時代のニーズや社会の変化が深く関わっています。2025年のキーワードである「得する消費」や「物×体験」を意識し、これらのトレンドをいち早くキャッチすることが、これからのビジネスにとって重要なポイントとなるでしょう。

今日はこの辺で。

Current NEWS

“情報”を追う | ランキング

今後のイベントはございません。