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楽天2024年度第3四半期決算――黒字化への飛躍的進展と成長戦略

2024年11月13日、楽天グループ株式会社は注目の2024年第3四半期決算を発表しました。この発表で三木谷浩史氏が強調したのは、モバイル事業を含む黒字化の達成です。「この黒字化は一つの通過点であり、持続可能な成長の始まりです」と語る彼のメッセージから、楽天エコシステムがどのように未来を切り開こうとしているのか、その意図を探ります。

1: 売上収益の増加――過去最高記録を更新

楽天グループが初めてIFRS基準で5億円の黒字を達成したことについて、三木谷氏は次のように述べています。

「我々は、非常に厳しい挑戦を続けてきました。多くの方々が『本当に黒字化できるのか』と疑問視していましたが、今回の結果でその答えを示せたと思います。この成果は、楽天の持つエコシステムが真に力を発揮した証拠です。」

特にモバイル事業について、過去数年にわたる設備投資と効率化の取り組みが実を結んだ形となりました。まだ単月では赤字ではありますが、その幅は小さくなっており、黒字化も見えてきました。その背景にあるのは、堅調に推移する楽天モバイル契約者数。

現時点で、812万件を突破し、楽天の差別化要因であるエコシステム内での他サービス利用数も増加しているのです。これにより、楽天全体の売上押し上げ効果を引き出しています。これが大きいのではないかと思います。

2: グループ全体の売上収益が過去最高に

「黒字化はモバイルだけではありません。楽天全体のエコシステムが一体となり、売上収益5667億円という第3四半期としては過去最高の記録を達成しました」と、三木谷氏はコメントを続けます。

グループ全体の連結売上は前年同期比9.3%増で、特にフィンテックとモバイルが成長を牽引しています。

具体的にいうなら、以下の点が要因となります。

•モバイル事業の売上が前年同期比19.5%増の1060億円。

•フィンテック事業が前年同期比12.8%増の2082億円を達成。

つまり、モバイル事業が順調に成長して、赤字幅を小さくし、一方で、フィンテック事業が伸びています。それで、楽天全体としての業績が良くなったというわけです。しかも、これらのフィンテックが好調なのは、楽天のエコシステムでの利用が促進されているからで、そこに起因しているのは、モバイルだとしています。

これらの成果により、楽天は「エコシステムの成長が収益にも直結するモデル」を構築できていると三木谷氏は強調するわけです。

3:楽天モバイルが黒字化の象徴に

三木谷氏は楽天モバイルの成長を「楽天全体の進化の象徴」と位置づけています。

「楽天モバイルの成長によって黒字化を果たせているのは、単に数字の達成という一側面での話ではありません。これは、楽天という企業が本質的にどう進化してきたのかを物語っています。しかも、モバイルの成長スピードは楽天カードの1.7倍。モバイルが牽引する未来が、いよいよ本格化します」と意気込みを語りました。

確かに、契約者数812万件の達成とともに、解約率は業界平均を下回る1.09%に抑えられ、顧客満足度向上にもつながっています。

また、契約者1人当たりがエコシステムに与える売上貢献度が前年比+47.9%と大きく上昇しており、これが黒字化の基盤となっています。

4: フィンテック事業の安定成長――エコシステムの要

いうまでもなく、フィンテック事業は、引き続き楽天グループの収益基盤を支える柱。下記のとおりです。

•楽天カード: 取扱高6兆円(前年同期比+12.7%)。

•楽天銀行: 口座数は1619万件、預金残高は11.1兆円(前年同期比+16.4%) 。

•楽天証券: 総合口座数は1165万件、預かり資産額は32.2兆円で前年同期比+39.1% 。

さらに、楽天カードによるショッピング取扱高が6兆円を突破し、前年同期比+12.7%成長を記録しました。「フィンテックは楽天の強みを象徴するセグメントです。楽天カードや楽天銀行、楽天証券が安定的に収益を支え、エコシステムの核となっています」と三木谷氏は語ります。

4:ネット通販を含むインターネットも堅調

当然ながら、楽天市場を中心とするeコマース事業の順調ぶりも、業績にはプラスに作用しています。国内EC流通総額は前年同期比6.9%減となったものの、ふるさと納税需要の反動を差し引いた場合、約5%増と試算されています 。楽天トラベルは、旅行需要の回復を背景にコロナ前比で43.1%増と大幅な成長を記録 。

毎回話すところではあるけど、楽天市場の購入者が、楽天トラベルや楽天カードなど他の楽天サービスを利用する割合が増加していることが、双方に価値をもたらしています。

個々の店舗とお客様をつなぐエコシステムの中心地であり、彼らの目指すところは、ここにデータ、AI、地域経済を結びつけていくわけです。その点においては、前段に触れたモバイルの成長はこれらをさらに伸ばす材料になります。

5: AI活用による効率化と成長戦略

彼らが今後の成長として、期待をかけている要素がAI。

実際、楽天モバイルではAIの導入によりカスタマーサポート費用が1人当たり37円まで低下しました 。この取り組みは、契約者増加を支えるだけでなく、他の分野でも「トリプル20」と呼ばれるプロジェクトの一環として効率化を進めています。

また、楽天というゲートウェイを通して、楽天市場、楽天トラベルなど、あらゆるものをRakuten Linkを起点に言葉一つでたどり着ける構想も示し、ショッピング体験そのものも変えていく考えを明らかにしています。

この裏側で支えるのも、勿論、AIということになり、それを手厚くバックアップするのは楽天IDによるパーソナライズの特定です。

黒字化で描いてきたビジョンに近づく

改めて、2024年第3四半期の楽天グループは、売上収益やモバイル事業の黒字化、フィンテックの成長など、今までと比べると明るい材料が多く見られました。心なしか、三木谷氏の表情の明るかったように思います。

まだ、モバイル単体で、単月で黒字化はできていないものの、その成長は十分、黒字化を推測できるもの。また、その伸びがエコシステムにもたらす影響を加味すれば、好感の持てる内容だったとかもしれません。

ここで本質を辿れば、モバイルが注目を集めがちですが、楽天エコシステム全体の連携と相互作用によるもので掴んだ業績であることが大事。

今後の課題として、さらなるコスト最適化とARPUの向上が挙げられ、AIにおける価値の最大化を図ることで、彼らの思い描く夢へと近づけるかどうか。お手並み拝見といきましょう。

今日はこの辺で。

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