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楽天が描く経済圏の未来— 2019年度決算に見る攻めの姿勢と変化の波 —

2019年度の楽天グループ決算は、売上高の拡大と純損益赤字という、いわば“明暗”が同居する結果となりました。ニュースでは「赤字決算」の部分に注目が集まっていますが、その背景には新たなビジネスチャンスを探る投資フェーズの存在があります。一方で、国内外でのEC流通総額の拡大や金融サービスの成長など、楽天が強化してきた「経済圏」の輪郭がいっそう明確になってきた印象も見逃せません。過去最高となった売上と海外でのブランド認知拡大、そして物流強化の構想から見えてくるのは、楽天がいま大きく舵を切ろうとしている姿です。

赤字決算の背景:ライドシェア投資と将来への布石

今回の決算でまず目立ったのは、純損益が318億円の赤字となったという点です。これは一足先に話題となった、ライドシェア大手「Lyft」の株価下落による影響が大きいと言われています。実際、投資フェーズと位置づけられる事業への先行的な資金投入は、当面の収支バランスを悪化させる要因にもなります。ただ楽天は、その「投資」が将来の新たな収益源につながると捉えており、あえてリスクを負いながらも成長の芽を育てようとしているのです。

安定するコアビジネスと成長フェーズの黒字化

一方、海外投資のインパクトばかりが注目されがちですが、その裏には着実に利益を積み上げているコアビジネスの存在があります。楽天市場や楽天トラベルなど、同社が長年培ってきた既存事業は、売上収益を前年から16.9%伸ばし、営業利益も19.5%増と大きく拡大しました。

さらに、電子書籍の「kobo」やチャットアプリの「Viber」、動画配信の「VIKI」など、いわゆる“成長フェーズ”の事業も黒字化の兆しを見せています。こうした堅固な土台と、可能性を開拓する新規事業の組み合わせが、楽天グループの大きな特徴と言えるでしょう。

カード・銀行・保険を結ぶ経済圏の強み

楽天カードの会員数はすでに1900万人を超え、楽天銀行や楽天保険とのクロスユースも加速しています。ECをきっかけに楽天グループを利用し始めたユーザーが、ポイントの利便性や特典を背景に、金融サービスへと“ワープ”する流れが顕著です。

これは楽天にとって大きな強みであり、商品を購入して貯めたポイントを銀行口座の開設や保険の加入に回すといった利用シーンが定着しつつあります。結果としてユーザーがグループ内を横断するようになり、楽天経済圏はますます堅固なものとなっています。

海外進出とブランド認知の広がり

国内での着実な成長に加え、海外にも視野を広げているのが楽天のもう一つの特徴です。台湾やスペインをはじめ、すでに複数の国・地域でブランド認知度が70%に達したとも言われ、ECにとどまらず、多角的なサービスでシェアを拡大しています。ポイントシステムの仕組みやスマートフォンのキャリア事業などを組み合わせることで、日本国内で成功した経済圏モデルを海外でも展開しようとしているのです。

物流強化とワンデリバリー構想

その一方で、国内のEC事業では物流網の整備に注力しています。独自の配送サービス「Rakuten EXPRESS」は人口カバー率を61%まで伸ばし、2021年までに楽天市場で扱う商品の約50%を「楽天スーパーロジスティクス」による自前物流に乗せる計画を発表しました。

一昨年には配送費の値上げや拒否騒動が話題となりましたが、楽天はコスト面で他社に先んじることで出店者・利用者の双方にメリットを提供し、サービスを維持・拡大していく考えです。

送料込みラインと店舗との温度差

ただ、最近メディアでも取り上げられている「送料込みライン」の設定については、出店者とのあつれきが生まれているのも事実です。楽天としては、送料がわかりやすいことは購買機会を増やすというデータをもとに、店舗に一定の送料方針を求めています。一方で、店舗側には「自由な価格設定が妨げられるのでは」という懸念もあり、優越的地位の濫用との批判が出ています。楽天は「不正店舗の排除」が狙いであり、価格の最終判断はあくまでも店舗に委ねていると説明しているものの、議論はまだしばらく続きそうです。

まとめ:変化する時代の中で掴む新たな機会

2019年度決算を受けて改めて浮かび上がるのは、楽天が「コアビジネスの安定」と「積極的な投資」を同時に進めているという点です。既存事業では確実に利益を確保しつつ、海外やライドシェアなど未知の領域にも挑戦し、経済圏そのものを拡大しようとしています。

赤字という数字だけを見ればネガティブな印象を受けるかもしれませんが、そこには新たなビジネスモデルを模索する明確な意図が見え隠れします。物流強化や金融サービスとの連携を通じて、ユーザーが楽天経済圏の中であらゆるサービスをシームレスに利用できる仕組みを作る。そうしたプランを実現するうえで、ときには店舗との調整が必要になり、ときには投資のリスクを負うこともあるのでしょう。

それでも、この“大きな変化”を乗り越えた先に、さらなる成長や新しいユーザー体験が待っている。楽天はそんなメッセージを今回の決算説明を通じて、改めて打ち出しているように感じられます。

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