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LINEヤフーのこころがわり-コマースの潮流 2023 ZHD 2022年通期(決算)を終えて

小売業が頭打ちの状況を迎えることが見えてきた。言っておくが「下がる」と言っているわけではない。Zホールディングスの2022年通期の決算発表はそれを痛感させるものであった。そもそも財布の中身の金額が変わらない中で、使う先はリアルかネットかでしかなく、今までなかった分だけ、ECは伸びてきた。言いたいのは、そうはいっても未来永劫、伸びるわけではないという事。それこそが、新社名「LINEヤフー」になってからの彼らのECへの姿勢だと思う。

2022年通期決算を終えて

1.皆がECをメインに据えるには無理がある

 

席上、出澤剛さんは神妙な面持ちで、慎重に言葉を選んでいたけど、ある意味、もっともな決断である気もする。既にECの部分でAmazonや楽天が先行して利益を得ている。その状況下で、小売に固執すると、どれだけお客様を集めるかだけになり、サービスとしてはイノベーションは存在しづらい。マーケットが成熟し始める中で、伸ばすのは得策ではない。

だから、逆にそれ以外の可能性を求めることが、結果、企業を維持しながら、コマースに関わる事業者に“長く”還元できると考えた方が良い。

まずは、全体の決算内容を見てみよう。

 

売上収益は1兆6723億円で、営業利益は3154億3300万円。当期利益は1891億6300万円で、調整後EBITDAは3326億1000万円。基本的には売上収益、調整後EBITDAともに三期連続で過去最高を更新した。営業利益も四期連続増益で、過去最高の3145億円だ。

2.2023年はとにかく選択と集中

とはいえ、危機感が滲み出る表情。ある意味、ECを筆頭に過剰な投資をした部分が大きい。今となっては、それは取り返しがつかない。だから、多額な投資に注力していたのを一気に転換する。そして、既存の事業のコストを削減する。そこに発言は終始した。

選択と集中を口にしており、ニュースを賑わせたLINE BankやGYAOなどもまさにそう。LINE時代も含めて取り組んでいたもので整理が必要なものは、集約をしていく。そうすることが過去の価値を活かす事にもなる。中途採用も控えて、現状の人員を守る。彼らには部署移動を通して適材適所を心がけ、堅実な経営を推進していく。

コストカッターにはならないぞという宣言でもある。そういう事情もあって、事業の中身を整理して、生産性を高める方向性となる。自ずと、成長性についての言及はトーンダウンしている。ゆえに、2023年のイメージは下記の通りである。投資家の間では、ワクワクさせる要素がないがという辛口の指摘もあった。だが、2023年の後半以降からその傾向が見られるはずだと、「LINEヤフー」の舵を取る出澤 剛さんは語った。

人を回遊させるその戦略の変容

1.EC単体への過剰な投資は見直し

彼らが関連する事業者の中で、eコマース事業者はまさにそのトーンダウンを実感する立場となるだろう。eコマースを筆頭に方向転換を余儀なくされているからである。これまでの決算ではまずeコマースの伸びを説明していたのに対してこの日は「検索と広告」を軸にする企業となる事を明言した。ECメインではない。

実際に、そのトーンダウンの傾向は2022年の下期で始まっている。既に「Yahoo!ショッピング」の出店店舗からは、売上が頭打ちで、場合によっては落ちていることが言われている。それを業績推移で当てはめてみると、その言葉が信憑性を増してくる。

コマース全体の話なので、Yahoo! ショッピング単体ではない。しかし、影響は少なからず出ていることが窺える。売上収益は8364億円で、2021年通期(8109億円)と比較すると、成長率はわずか3.1%増である。つまり、今まで伸びていたところは、現状維持かもしくはやや低下傾向に転じている可能性が高い。

2.店舗での売上減があるならそれは戦略の変化によるもの

それは「Yahoo! ショッピング」全体のポテンシャルが「下がった」のかというと、そういうわけではない。彼らは戦略を変えたわけである。特に、これまでは「超PayPay祭り」などを実施して、盛んにセールを行っていたのを控えた。今までヤマ場としていたものを、取りやめたのだからそれは当然、ダメージである。

店舗として売上減があるとすれば、この分である可能性は高い。

繰り返すが、従前はeコマースへの投資を強化した。流通総額(GMV)を業界ナンバーワンとすることで、会社のエンジンにしようとしていたからだ。つまり、ECを軸にした経済圏構想である。

GMVが伸びれば、広告が増えて、広告で得た収益を、ポイント還元に回していけば、結果、それがGMVを更に伸して、、というサイクルを狙っていた。そうすれば「 PayPay」などの資産も活かして、会社全体に明るい基盤ができると考えたわけだ。そこで会社一丸となって、eコマースに注力。GMVを業界ナンバーワンにすることを決意したわけだ。

ところが、GMVの伸びに対して、広告の収益がポイントの放出に見合わなくなって、結果、全体の利益率が低下したという事になった。ポイント放出するだけの力を広告が持てないから、ポイントを放出するほど、彼らは体力を失う事になる。大袈裟にいえば、出ていく一方となり、ポイントをフックに流通額を増やす戦略に区切りつける必要が出てきたわけだ。

3.広告・検索を柱に生産性高く集客

そもそもモール自体が利益率が高い商売ではない。経済圏全体の活性化のためにした施策ではある。けれど、ここに打ち込むほど、これが利益率の高い「検索」や「広告」にも影響してくるわけだ。なぜなら、それによって会社全体の利益率が下がるからである。会社全体を事業形態を思えば、GMVを伸ばす作戦は、会社の基盤を揺るがしかねないものとなったわけだ。

ただ、ここで彼らは明確に、利益率の高い「検索と広告」に注力していくというわけである。そして、生産性の高いその集客力を土台にして、彼らは並行して、会員の深掘りを行うわけだ。広告というと不特定多数の人からの入り口であり、そこで完結している部分もある。

けれど、彼らはそれを通して集客した上で、「LINE」「Yahoo! JAPAN」「PayPay」という武器を全面に出す。具体的には、それらを横断する「LYPプレミアム会員」を作るのである。

eコマース事業者にとっての転機

1.集めた人から会員にしてそれを盤石に

ここで初めて「LINE」「Yahoo!」「PayPay」の各コンテンツが活かされる事になる。つまり、Yahoo! JAPANとLINEのメイン事業であるメディアを全面に出し、多くの人を集める。ただ、そこから先に、より会員として付加価値を高める強みとして、これら3つを相互に行き来する利点を提供するわけである。

プレミアム対象のスタンプは使い放題であったり、 Yahoo!ショッピングを使うほど、通常よりPayPayポイントが付与されるなどである。

企業としては「広告・検索」の利幅を得て、会員制度の定着を目指し、会員制度が定着すれば、そこでサブスクリプションが成立する。これが会社にとって経営を安定化させる材料となる。この会員獲得が実れば、結果、それが「Yahoo!ショッピング」の売り上げにも貢献してくるというわけである。

僕はこの一連の話を聞いて、明らかにAmazonや楽天とは違うアプローチなので、長い目で見れば、いい戦略ではないかとか実感した。繰り返しになるが、財布の中身は増えない。だとすれば、同じ土俵で戦い続けるのは疲弊するだけである。まさに疲弊し始めて、彼らはその決断をしたわけだ。

2.eコマース事業者は不特定多数の戦略を見直すべし

これが何を意味しているかといえば、セールに依存した店舗運営は見直しをするべきであるという事。売上重視であれば、それらのセールはありがたい存在だ。しかし、経済圏が無数にあったところで、これらのセールはその経済圏にとってデメリットのが大きい。自らの資産を持ち出して、活性化させる作戦だから。

「超PayPay祭り」をやっていた分が、第4四半期ではなくなって、大きくそのダメージが出た店舗もあるだろう。しかし、寧ろ、第4四半期での実績こそがYahoo! ショッピングなどの、これからのデフォルトになることはほぼ間違いない。だから、Yahoo!ショッピングはもうダメだという店舗も出てきそうだが、それは、方向性の転換なのであって、それに伴って向き合い方を店舗側が変えるべき時なのだ。

恐らくセールを乱発して流通を活性化させる作戦は一部も原資が伴う経済圏が確立されているところに限られるはず。その原資だっていつまでその企業にとって存在し得るかわからない。上記の通り、わずかなバランスの違いで、全く状況は変わる。だから、時代は間違いなく、それぞれ自社の固定客を尊重してそこをフックに経営を安定させていく事になる。つまり、店は店で、出店先に応じて臨機応変に変わること。それこそ、これから求められる店舗のあり方なのだ。

3.スケールメリットを追うのは一部の企業のみ

改めて思うのは、スケールメリットを「誰もが」追う時代はリスクを大きく伴うということ。それでビジネスが成り立つ企業もあるけど、それは並立し合えるほど、楽なものではない。なぜなら、スケール自体を見誤ってしまうと、かけた投資がそのまま、ダメージとなって会社の根幹部分を揺るがすからだ。

だから、仕切り直しになる。今度はLINE出身の出澤さんが表舞台に出てきた。彼は数奇な運命にあり、元々、ライブドアに始まり、この手の合併に関わるのは三度目である。その度に彼は立ち上がって、存在感を発揮してきた。奇しくも、ここでも立て直しも迫られる事になった。

結局、会社は原点に変えるのだと思う。楽天がずっとeコマースで存在感を出すようにしているように、LINEとYahoo!JAPANはメディアで存在感を出すべきだろう。メディアとしての特性は違うけれど、そこに基づき、広告で利益を作って、それで躍進した企業であることは間違いない。

昨今はTikTokなど、“メディア”が多様化する中ではある。そこと対峙する事になろうが、かつてLINEが国内を席巻したように、今一度原点に立ちかえるべきだ。また、eコマースの関係者にとっては、辛抱が必要な決断ではある。ただ新しい体制に備えた向き合い方を模索して、Yahoo!ショッピングにふさわしい身の丈に合わせたビジネスを追い求めていくことが大事になるだろう。

今日はこの辺で。

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