LINEユーザーを取り込みEC触発 小澤氏顧問へ 時代の転換 ZHD2023Q1(決算)
Zホールディングスは、2023年度第1四半期決算について説明を行った。売上収益は4305億円(YOY +10.2%)と調整後EBITDA999億円(同+15.6%)であり、ともにQ1としては過去最高を更新。PayPayはサービス開始から4年半経過するが、同社の連結ベースで、当四半期で初めて、調整後EBITDAが黒字化を達成した。また、経営陣が一部、刷新され、Eコマースを支えてきた小澤隆生さんが、顧問へ転じることになり、時代の変化を思わせた。
2023年第1四半期ハイライト
改めて、全社の業績推移を見てみよう。
メディア事業では、アカウント広告の売上収益が2桁成長を継続しており、中でも、検索広告の売上収益の前でYOYで+5.2%と堅調に拡大している。コマース事業は、子会社の成長とコスト最適化による収益性改善に注力しており、調整後EBITDAが20%強となった。終始、「選択と集中」を強調。今後の部分では、国内金融事業を再編すると説明した。
先ほど触れた「売上収益」の増収要因について、主にPayPay網連結化やメディア事業の増収に基づくものだと説明。全社的に見て、調整後EBITDAマージンも改善。23.2%となっている。コスト面に関しては、業務委託費の削減や販促費の効率化を前期から進めている。
彼らが強調する「選択と集中」の効果が表れているとした。現状、固定費の削減は順調に進捗をしていることもあり、健全な財務体質が整いつつあることを強調した。
営業利益を堅実にとりにいく
営業利益の増減分析についてはこちら。減価償却費やPPAの償却費負担は増加したものの、調整後EBITDAの成長により、営業利益がYOYで+593億円となった。
今後の流れは、「LINEヤフー」のスタートに合わせて、重複事業を中心に「選択と集中」を進めていく。特に、国内金融事業領域では、2社体制からZフィナンシャルに機能を集約していき、この傘下にLINE証券とLINEクレジットが加わる。
新体制を発表
冒頭に話した通りだが、10月の合併後の新体制である。新体制では意思決定のスピードアップを目的に取締役体制のスリム化を図る。権限委譲も推進して、事業系の組織では7つのカンパニーを設置。カンパニーCEOが事業領域の経営に権限と責任を持つ格好だ。
コマースは収益性の改善に努める
1.調整後EBITDAで成長
コマース事業の業績推移は次の通り。今回は、前回から続き、選択と集中の一つで、ヤフーショッピングやLINEのイーコマースで販促費を削減。それにより、収益性が改善して、調整後EBITDAはYOY+24.2%の成長となった。また、その結果調整後EBITDAマージンは20%を超える水準となっている。
eコマース取扱高全体の推移に関しては次の通り。国内の物販系取扱高に限った部分の成長率はYOYで-1.9%ではあるけど、「底打ちの兆しが見られる状況」と説明。
2.成長率の下降もやや減少
具体的に、国内eコマース取扱高をそれぞれ分類したものが下記になる。国内ショッピング事業の取扱高はYOYで-8%ではあるけど、前四半期(-13.3%)比では成長率が改善。会社として、それが想定内の着地だと判断している。なお、国内リユース事業はPayPayフリマが牽引して、安定的な成長を続けているという。昨今の外出需要が増加したことで、トラベルの部分は好調を維持。
今後はLYPプレミアム会員を軸に展開
1.収益の改善と質の向上
さて、コマース事業のこれからはどうなるのか。特にYahoo!ショッピングの収益性を改善に努め、どちらかといえば、サービスの「継続率」や「収益性」を重んじていく形になる。その為には、「プロダクトの強化」を推進させて、足場固めを徹底するわけだ。
具体的な数字に照らし合わせてみてみよう。
Yahoo!ショッピングの粗利率を見ると、第1四半期はYOYで22ポイントの改善しているのがわかる。つまり、こういう要素を徹底しながら、「新規顧客の継続率」や「優良配送比率」も拡大していけば、より盤石な体制ができる。
2.LYPプレミアムでシナジーを最大化
築いた盤石な土台はどこで生かされるのか。それが11月からのLYPプレミアムである。
Yahoo! ショッピングの利用者には上記のような質の向上で継続に努める。大きな違いが、新たに、LINEユーザーをコマースに導くことにある。従来のプレミアム会員に加え、LINEの特典を盛り込むわけである。従来であれば、eコマースに寄せて投資をしていたけど、そうではない。既に存在する会員などを回遊させることで、投資なくとも、自らのリソースを販促要因にする。
そうすれば、継続率や収益性が改善していく。それが、だから継続率や配送の向上が大事なのだ。下期の成長に向けたサービスの基盤整備となるから。
3.PayPayの安定とLINEユーザーのEC浸透
冒頭にあった通り、PayPay事業が黒字化を果たし、金融事業の土台を盤石にさせて、このグループの成長につながる大事なアセットとして、育てていく。一方、LINEのユーザーを取り込みながら、若年層のECの利用を触発しつつ、LYPプレミアム会員を強化する。それらをPayPayを軸とした決済で取り込むことで、グループシナジーを最大化していく。
以前はeコマースを業界をNO1にしていくことで、他へのシナジーを目指していたが、そこへの投資が過剰であることから、方向転換。逆にこれからは、今あるアセットを有効活用して、販促費用を抑えた形で、この企業の成長を促す戦略へと切り替えた。
その上で、選択と集中を図り、健全な財務を作りながら、独自のカラーを作り出していくことになる。どちらかと言えば、会員組織としての強化を図り、サービスの質の向上と、そこにもづく信頼構築と継続。ここが、彼らの新戦略の肝となりそうだ。
今日はこの辺で。