全てはメディアにあり LINEヤフー2023年通期(決算)
群雄割拠の経済圏。ただECを切り分けて考えるなら、施策面で同じようなことをして競っていくことはないだろう。つまり、それぞれの経済圏で発揮される力は異なっていく。先日のLINEヤフーの2023年通期決算の内容を聞いて実感したことである。語弊を恐れず言えば、楽天などと比べて、LINEヤフーは経済圏のわりに、ZOZOなど関連するECモールとのクロスユースへの言及が少ない。それでなぜだろうと思ったわけである。
PayPayなど金融事業が堅調な伸び
思うに、そこで比較すること自体が実は、ナンセンスなのかもしれない。つまり、彼らは経済圏の考え方を軸にしながらも、他の経済圏とは違った視点で見ているのだろうと推測される。
それでは、それを踏まえて、業績についても触れることにしよう。全体を見れば「PayPay」の成長が顕著であり、投資段階にある戦略事業単体で調整後EBITDAが通期で初めて黒字になったことを明らかにした。ゆえに連結での業績でも、PayPayが売上収益の点で成長を牽引してYOYで増収。要するにPayPayと、PayPayカードなど金融の売上で伸びているわけである。下は全体の売上収益である。
昨年あたりから言われている「選択と集中」。その甲斐あって、全体の調整後EBITDAはYOYで24.7%増の4149億円。LINEヤフーにおける粗利や販管費の改善が進んでいる。当然、EC系においてのコスト削減は進んでいることで、国内ショッピング取扱高は-1.7%という具合で元気がない。
ただ、悲観していない様子。いわゆるコスト削減の影響はECにおいては、底を打ったと考えていいと説明している。現にその証拠として「Yahoo!ショッピング」に関して言えばショッピング取扱高はYOYで10%の成長である。
LYPプレミアム会員が売上を作る礎になっていく
上記の図の通り、新しいEC系の売り上げでの軸は何か。それこそが「LYPプレミアム」である。月額508円支払う。Yahoo!プレミアム会員の進化系で、LINEやPayPayの特典を加味したもの。だから、まずは手始めに2024年2月にはキャンペーンを実施。それに伴って100万人増加した。結果、合計2440万人に。
僕の私見だが、今後、大体、2000万~3000万あたりが、各経済圏のコアユーザーになるのではないか。というのも、楽天の経済圏の要である楽天カードの契約件数が3000万程度。この利用者が楽天ファッションなどのクロスユースを生み出している。
また、10日に行われたKDDIの決算でも「auスマートパス」を刷新することが発表された。現在中心となっている「auスマートパスプレミアム」は月額548円。今後は、ローソンの特典をいれて行うとしており、名称も新たに「Pontaパス」に。高橋社長が話していた目安は2000万人。そこを目指すというわけである。
大体数字が近いことがわかる。
恐らく、そのコアな顧客の数までは伸ばして、伸ばして以降は、その単価を上げていく施策になっていくと思われる。LINEヤフーのでいえば、まだ獲得時期だと捉えて良い。また「LYPプレミアム」の新規入会者の53%がLINE経由であるとしている。だから、「Yahoo!ショッピング」にとっては、そこが伸び代になりそうである。
Yahoo! ショッピングの利用率が高いにも「LYPプレミアム」
この「LYPプレミアム」のYahoo!ショッピングの利用率は、想像通り。彼らの発表によれば40%以上にのぼっている。だから、この会員数の増加が、売上高を上げていく要因になる。
加えて、彼らの差別化要因は、やっぱりメディアなのだと思う。「LINE」「Yahoo!JAPAN」いずれも、2024年度内で、大きく刷新することを発表した。ここが先ほど話した楽天などとは違う点になりそう。アプリ刷新は、顧客の利便性を高める動きでありながら、顧客情報を例えば、ECの購買と紐づけるなどして、あらゆる行動を一体で見て商機を見出す。
結局のところ、以前、パルコの施策で触れた内容と近い動きをするのではないかと予測する。
参考:J.フロント リテイリングに学ぶ 変貌する顧客データ収集法と分析の舞台裏
何が言いたいか。パルコではそれまで顧客情報は購入情報の視点でしか見ていなかった。けれど、今では、それ以外の要素を購買と紐付け、俯瞰して顧客情報を見ていった。それで、いかに継続顧客を増やしていけるかという戦略を組んで、結果売上が伸びている。い
LINEヤフーの場合、メディアを重んじるほど、様々なジャンルに渡っていく。だから、それらの情報を購買などと結びつけると、彼らにしか得られない独自の顧客データとなる。かつ、それをLYPプレミアムの会員に落として、継続顧客に繋げれば、企業としてプラスになるのはいうまでもない。
購買だけではなく、メディアで吸収するデータと合わせて顧客分析
だから、このタイミングでメディアアプリを刷新するのだと思う。
Yahoo!JAPANアプリにおいては、現時点で、話題になっている検索ワードがわかる「トレンド」タブ、ユーザーが自分の趣味嗜好に合わせてピックできる「フォロータブ」をつける。しかも、個々人にフィーチャーして、天気や占いに至るまでまとめて提供する「アシストタブ」の実装をするといっている。
アシストタブがそうで有るように、これが何を意味しているのかというと、個人の特定なのである。ユーザーの利便性を高め、裏側ではお客様のバラバラな行動の紐付けを行い、データに基づき、商機を伺う。その正解を「LYPプレミアム」の継続度合いと照らし合わせれば、よい。継続する確率の高いユーザーに対して、然るべき特典を用意すれば、お客様は定着して、会社が安定するわけである。
だから、先ほど、コアとなる顧客の数は大体、2000~3000万くらいを持ちつつ、パイの取り合いになりそうに思える。けれど、各社得意分野が異なるからこそ、そこで使われるリソースは違ってくるはずだ。
購買以外の行動も踏まえて顧客分析
要するに、メディアでの強みが発揮されれば、それは彼らに一日の長がある。他の経済圏にはない財産なのだ。だから、そこをテコに「継続する確度」の高い施策に対して、投資をしていくこととなる。
恐らく、もはや流通総額NO1を目指すなどと言って、ポイントをばら撒くことはもう彼らはしないだろう。一方で店舗は店舗で、いかにYahoo!ショッピングを入り口としながらも、今まで以上に継続させる工夫をしていくか。そういうことを考えていくと、LINEヤフーとの関係がウィンウィンになっていく。
改めて、彼らは今コマース単体の施策として、商品点数の増加に努めている。単純な施策に思える。だが、実は、商品が増えるほど、LINEヤフーがメディアを絡めて、お客様を知るための材料を増やせるわけである。
店にとってもそのLINEヤフーの呼びかけに対して、新しい商品の枠をYahoo!ショッピングで見つけたほうがいい。それができれば、新たなお客様との出会いの機会を作り出す。そのことが大事な理由は、先ほど触れた継続の土台ができるからである。
おわかりいただけたか。各モールの強みを鑑みながら、モール単位でその傾向を分析していくことが大事なのだ。改めて、商品内容を変えるなどして、各モール内で一番発揮される商品とお客様との相性を模索していく。それが、事業の成長を考えると極めて重要になりそうなのである。
きょうはこの辺で。