Rakuten EXPRESS 終了 波紋の理由
ビジネスには色々な側面があるから利害が生まれる。ひとつの施策の決断もその立場が変われば、受け止め方も全く異なる。最近、楽天グループは「 Rakuten EXPRESS のサービスを5月末に“終了”させる」と同サービスで委託している配送企業に伝えた。ところが、それが反発を招き波紋を呼んでいる。なぜこのようなことになったのか、そこを考えたい。
あくまでも「ことの本質」を見定めるべきだと思っている。そもそも Rakuten EXPRESS はその名の通り、楽天が自前で構築した配送網。昨今のネット通販の拡大により、急激に物流の重要さが説かれ、同社は自前の配送網の必要性を語るようになった。Rakuten EXPRESSを展開するにあたっては、全国への配達をフォローするべく、地場の配送企業に依頼し、連携するなどしてそのサービス向上に努めていたのだ。
ただ、その状況が変わったのは、楽天グループは7月に日本郵便との合弁会社「JP楽天ロジスティクス」を設立することになった事による。配送力を強化するための企業ではあるが、それに伴い、配送の体制を見直す必要が出てきた。だから上記のような決断に至るわけで、楽天グループは自然な流れで、アナウンスをした。ところが、そこに一部の委託企業は強く反発を示したというのが主な要旨である。
Rakuten EXPRESS 終了 でのパートナー企業への配慮は?
この問題を考えるに、まず、その委託された配送企業がどれだけ体制を変えていたりするのか、という点が気になった。つまり、委託される企業もビジネスである以上、それを機に人員を増加させたり、設備に投資したりする可能性もある。それをしていたとすれば「最終発注日が5月末日」とするのは日程的にも近く、梯子を外された印象を抱いてもやむを得ないだろう。楽天グループ側に配慮が不足していたと言われても仕方がない。
でもそれだけだろうか。
もっと本質的なものがあるのではないか。この点、物流の現場に詳しいリンクス代表取締役 小橋重信さんに「現場にとってはそれだけ大きな問題なのだろうか」と聞いてみた。小橋さんはうなづき、特に「事前の楽天との話で、どれくらいの物量を約束して、現在どれくらいの仕事を受けていたかによるだろう」と説明してくれた。
やるにあたって、事前に予め数量をコミットしているはずでその量によっては、反発もあり得なくもないと指摘してくれた。だが、小橋さんはこうも話してくれて「ただ、そこまで楽天専用に投資をして増やしている企業がどれだけあるのだろうか。つまり、既存のインフラでやってとこも多いのでは…と思ったりもしますが、なんとも言えないですね。」と。
そして「むしろ、こうなっている要因には、これまでの仕事がなくなることによる「売上減」についてではないかと思います。その仕事を日本郵便も取りに来てたと思いますから…」と続けた。それを聞いて、ハッとしたのである。
Rakuten EXPRESS 終了 の動きは根が深い?
実はこれはもっと本質的な話であり、根が深いのかもしれないと。
もしかしたら、そこまで反発するほど配送企業は莫大な投資をしていないかもしれない。けれど、それよりむしろ自分たちの今までの仕事が、資本の力で日本郵便にとられていくことに、少なからず苛立ちを感じてもおかしくない。日本郵便も生き残りをかけた勝負だけにやむを得ないが、それだけにその配慮は必要だったろう。
楽天グループはここのやりとりを慎重かつ丁寧にやるべきだったはずなのだ。ルールだからで片付けられない問題がある。もっと今まで委託していた配送企業の状況を鑑みながら、その契約を切り替えるタイミングを模索していたら、こうはならなかったかもしれない。
この一件を通して、今一度、プラットフォーマーとしての然るべき振る舞いを考えるべきであろう。今回は物流だけど、資本提携をしているのは日本郵政であり、それら以外のジャンルでもこの連携がもたらす軋轢が無くはないだろうと思うから。正しいと思ったことでも、立場が変われば、そうと受け止められるものでもない。どこの誰がそこに不満を感じて、反発するか、わからない。それを考える柔軟さが今、一番求められている。