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デジタルと物流が拓く遠隔診療の新潮流──ヤマト運輸の挑戦

オンライン診療の需要拡大が見込まれるなか、ヤマト運輸が新たな存在感を示そうとしている。デジタル技術と物流の強みを掛け合わせることで、医療機関や調剤薬局の負担を軽減し、患者の利便性を向上させる取り組みに乗り出したのだ。そのカギとなるのが、オンライン診療・服薬指導システム「YaDoc Quick」と、ヤマト運輸の送り状発行システム「B2クラウド」のAPI連携である。

遠隔診療を支える「YaDoc Quick」とは

 「YaDoc」(ヤードック)は、ICT技術と医療ノウハウを融合させることで、医師と患者の双方向コミュニケーションを深め、診療の質向上に寄与する疾患管理システムだ。その姉妹システムとして開発された「YaDoc Quick」は、オンライン診療・オンライン服薬指導を行うためのプラットフォームで、2021年2月末時点ですでに約3000の医療機関に導入されている。

 遠隔診療やオンライン服薬指導においては、医療現場が対面で行ってきたやり取りをデジタル上に置き換えるだけでなく、症状の変化や治療経過をより正確に共有することが求められる。YaDoc Quickは、ICTの先端技術を用いてそのプロセスを円滑にし、患者の負担軽減と医師の業務効率向上を同時に実現しようとしている。

ヤマト運輸「B2クラウド」とのAPI連携

 ここで注目すべきが、ヤマト運輸の法人向けWebサービス「ヤマトビジネスメンバーズ」に含まれる「送り状発行システムB2クラウド」とのAPI連携だ。患者はオンライン診療の際、自身の個人情報を登録するだけで、処方薬の配送に必要な情報が自動的にB2クラウドと連携される。

 これにより、オンライン診療が完了してから処方薬の配送依頼までをシームレスに進めることが可能になる。調剤薬局にとっては、煩雑な配送手配の手間を省き、患者は診療から受け取りまでを一括で済ませられるという大きなメリットが生まれる。

調剤薬局の負担軽減と物流企業の新たな存在感

 オンライン診療が普及するほど、処方薬の受け渡しをいかにスムーズに行うかが大きな課題となる。これまでは薬局のスタッフが患者一人ひとりの配送情報を入力・管理する必要があったが、システム連携によってそれらが自動化されれば、薬局の業務効率化と患者満足度の向上につながる。

 同時に、ヤマト運輸も「物流インフラ」と「デジタル技術」の結びつきを活かし、単なる“荷物を運ぶ会社”から、医療やヘルスケア分野のプラットフォームパートナーへと進化を遂げようとしているといえる。

物流のデジタルシフトが産業を変える

 近年、ネット通販の拡大に伴い物流企業の重要性はますます高まっているが、その存在感は単なる配送の枠を超えつつある。物流網と先端テクノロジーの融合は、今後さらに多くの産業のデジタルシフトを支え、あらゆるサービスの質を向上させる原動力となるだろう。

 ヤマト運輸が今回の取り組みを通じて得ようとしているのは、まさにそうした「新時代の物流企業」としてのポジションである。医療機関や調剤薬局、ひいては患者といった幅広いステークホルダーにとって、使い勝手の良いシステムを提供することは、ヤマト運輸がこれまで築き上げてきた全国規模の配送インフラをさらに活かす絶好の機会になる。

今後の展望──産業の垣根を超えて

 遠隔診療の市場が拡大するなか、この取り組みはオンライン診療・薬の処方分野にとどまらず、さまざまな業種・産業との連携モデルとして広がっていく可能性を秘めている。デジタルと物流の融合はもはや特殊な試みではなく、新しい産業価値を創出するスタンダードとなりつつある。

 ヤマト運輸は、こうした流れを踏まえながら、自社の強みである物流インフラを活かし、会員サービスや企業向けサービスのさらなる向上を目指している。この先、多様な業界とのコラボレーションが進むにつれ、私たちの生活がデジタルでより便利になり、同時にリアルなサービスの充実も期待できるだろう。

まとめ

 ICT技術による医療支援システム「YaDoc Quick」とヤマト運輸の「B2クラウド」のAPI連携は、オンライン診療から処方薬の受け取りまでをシームレスにつなぐ画期的な仕組みである。調剤薬局の負担軽減と患者の利便性向上を実現すると同時に、物流企業としてのヤマト運輸の新たな可能性を示す取り組みでもある。ネット通販のみならず、多様な産業の活性化を支える物流のデジタル化は、私たちの生活にさらなる革新をもたらすことになるだろう。

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