新たな“製造業”のかたち──孫正義が描くソフトバンクの未来
昨日行われたソフトバンクグループの決算発表会では、純利益が3兆551億円に達したことが大きな話題となりました。しかし今回注目したいのは数字以上に、孫正義氏の発言です。彼は会見で「ソフトバンクは製造業」と語りました。一見すると突飛な表現ですが、それはどのような意味を持つのでしょうか。孫氏の発言を追いながら、ソフトバンクグループの戦略と今後の展望に迫ります。
1. 「ソフトバンクは製造業」とは何を指すのか
会見の冒頭、孫氏は「ソフトバンクは製造業だ」と宣言しました。「何の製造業なのか?」と誰もが疑問に思ったはずです。これについて孫氏は「ガチョウによる金の卵の製造業」だと比喩を使って解説しています。
• ガチョウ=情報革命
かつて孫氏は「自分の会社でインターネットの養卵機を作っていた」と語っています。インターネットという“ガチョウ”に投資し、その“金の卵”がヤフーやアリババなどの世界的企業に育ったというわけです。
• 「ものづくり」ではなく「インフラづくり」
孫氏の言う“製造”は、いわゆる物理的な「ものづくり」ではありません。むしろ、インターネットやAIといった技術を核に、スタートアップへの投資や通信インフラの整備を通じて“金の卵”を生むための「環境を作る」ことを指しています。
2. 投資会社としてのソフトバンク──休眠から再始動へ
2-1. かつての投資ラッシュと“休眠期”
孫氏は長年、スタートアップへの投資を続けてきました。しかし10年ほど前からは、通信事業に注力するため、投資会社としての活動は控えめになっていたといいます。
• ヤフーBBの整備、モバイル事業の買収
高速インターネットや携帯電話事業のインフラを買収・拡充し、料金プランの見直しなどを重ねていった時期にあたります。
2-2. 「ビジョンファンド」で投資活動を再開
ここ3~4年、ソフトバンクが再び投資会社として表舞台に立つきっかけとなったのが「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」です。AI関連企業を中心に大規模な投資を行い、海外のスタートアップを支援することで新たな“金の卵”を生む準備を進めてきました。

• 孫氏自身は通信事業から離れる宣言
「通信(ソフトバンク)は宮内に任せて、私は次の世界へ全力を投入する」と明言。孫氏が新たに注目したのは、かつての「情報革命」に代わる「AI革命」でした。
3. 次の大波はAI革命
孫氏は、AI革命が幅広い産業を一気に塗り替えると予測しています。自らが投資した企業が上場し、世間から「金の卵」でないと言われた時期も乗り越え、今後は多くのAI関連企業が事業を本格化させると確信しているのです。
「腐った卵しか産まない」と言われたのが、ほんの一年前のことと孫さんは言った。
「機能していないファンドとも言われた」。でも、投資した企業のうち、上場したのは2社、4社、6社と毎年、年を追うごと伸びていき、2020年は11社となっていて、「私は信じていた。だから今こうして収穫期に訪れた」と述べたのである。

4. インド発の技術が日本のPayPayへ
決算発表の中で触れられた「PayPay」の技術は、インドのスタートアップ企業「Paytm」からの協力を得て生まれました。

• ヤフーが技術協力し、日本でサービスを展開
ソフトバンクが海外で投資した企業のノウハウを日本に持ち込み、ヤフーと組み合わせることで「PayPay」というサービスを短期間で普及させました。
こうした海外投資と国内サービスの連携は、単にグローバル企業同士のシナジーを狙うだけでなく、日本の経済や生活を変革する可能性を秘めているといえます。
5. 孫正義が考える“製造業”の真意
5-1. AI革命への集中的な投資
孫氏は「金儲けだけといわれるならそれでもいい」と述べつつ、「ほぼ全部、筆頭株主として入り、具体的なアドバイスを行う」点を強調しています。AI関連企業への投資に特化することで、それぞれが相互につながり、より大きなシナジーを生む構造を作り上げているのです。

5-2. 「もの」ではなく「可能性」を“製造”する
孫氏は職人的に一つの技術をコツコツと作り上げるタイプではありません。世界中の才能あるスタートアップを“見つけ出し”、そこに資本とインフラを提供して、事業を大きく育てる。それを彼は“製造業”と呼んでいるのでしょう。
6. まとめ──新たなインフラで金の卵を生み出す
孫正義氏の言葉を借りれば、ソフトバンクグループは「金の卵を生む“ガチョウ”を育てる製造業」です。インターネットから始まり、AI革命へと移行していく世界で、彼は次なる巨大企業を輩出することを目指しています。

• 日本の産業と生活への影響
投資先の技術がPayPayのように国内でも広く利用される例が今後も増えると考えられます。結果的に、日本の生活やビジネスが大きく変わる可能性があるのです。
孫氏の戦略が“製造業”と呼ぶにふさわしいものなのかどうかは、今後の成果次第。しかし、一流企業に育て上げて圧倒的な影響力を持つ存在を次々生み出していく姿勢には、今後も注目せざるを得ません。決算発表で示された過去最高益は、ソフトバンクが次なる「金の卵」を生み出すための舞台が整ったことを意味するのかもしれません。今後の動向に期待したいところです。