本読みました!「砂の女」

先日、ふとしたキッカケで、安部公房さんの 「砂の女 (新潮文庫)」を読みました。やっぱ安部公房さんは違いますね。小説に思想がある。
自由を必要とせず、ただ生きるためだけに、固定された作業を強制される社会がそこに出てきます。それで、そこに自由を求めている男性が入っていった時に、何が生まれるかって話です。
如何なる自由の主張も何の意味も持たないその世界で、自由が自分を形成している全てだと思って生きてきた人。必死に抗いますが、悲しいほど通用しません。
逆に、その世界で何も考えず、ただ生きることだけに固執する人たちの強さが際立ちます。
つまり、蟻地獄なんです。自由を求めて這い上がろうとするほど、彼が陥った世界がそうさせません。それを削ぎ落とされた時に、自分って存在価値はどこにあるのかと激しく乱れるんです。
ここで描かれる男はロマンを追い、生きる意味に拘る性質を持っているけど、女は現実的。それが極めて対照的。
所詮、自由だと言いながらも、生きる事を最優先していかなきゃそれも口にできません。改めて、自由って何かを考えらせられます。そういう本質を考えるように、鋭く指摘しているんです。